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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十四話 訓練
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な感じだ。皆、現状の悲惨さに頭を抱えている。二階級特進、現実味を帯びてきた。ジェシカ、どうしよう……。

「司令官閣下は御存じなのかな、この現状を」
キャボット少将の言葉に皆が顔を見合わせた。自然と視線がチュン参謀長に向かう。参謀長が渋い表情で答えた。

「或る程度の予想はつけていたと思う。会議への参加を要請したが自分が居ない方が話しやすいだろうと言われた。自分が会議に参加するのはもう少し後の方が良いだろうと……」

「どうやら気遣って貰ったらしいな。確かに司令官閣下の前でこんな情けない話は出来ん、首を括りたくなる……」
ビロライネン准将が溜息交じりの口調でぼやく、周りからも溜息が聞こえた。

会議室のドアが開いた、ミハマ中佐が笑顔を浮かべながら中に入ってくる。会議室が緊張に包まれた。中佐は司令官から何か言われてきたのかもしれない、皆そう考えたのだろう。

中佐は手に結構大きいサイズのピクニックバスケットを持っていた。会議卓に近づくと“ヴァレンシュタイン提督からの差し入れです”と言ってバスケットの中から小さな菓子入れを取り出してテーブルの上に置いていく。全部で四つ、俺の前にも一つ置かれた。中にはクッキーが入っている、美味しそうだ。

「中佐、提督からの差し入れと言ったが貴官が作ったのかね」
「いいえ、提督が作ったんですよ、コクラン大佐。とっても美味しいんです」
ミハマ中佐の答えに皆の視線がクッキーに集中した。一瞬にしろ毒入りかと思ったのは俺だけではないだろう。皆が厳しい視線でクッキーを見ている。

「提督からの伝言が有ります。急ぐ必要は有るが焦る必要は無いとのことです。艦隊を精強ならしめるのは訓練が終了するまでに実現できれば良いと……。先ずは現状をきちんと把握して欲しいと言っておいででした」
そう言うとミハマ中佐は軽く一礼して会議室を出て行った。後にはクッキーと困惑した空気が残っている。

皆が顔を見合わせた。
「……残すのは拙いでしょうな、……捨てるわけにもいかない」
沈黙の後に悲痛とも言える声を出したのは俺の隣に座っていたウノ少佐だった。クッキーをじっと見ている。確かに残すのは拙い、捨てるのも論外だ。となれば食べるしかない。会議室の空気が更に重くなった。

「小官が先陣を切ります、後を頼みます」
待て、ウノ少佐、後を頼むとはどういう事だ? 食べてくれという事か? 大体何でクッキーを持つ手が震えている?

クッキーがウノ少佐の口の中に入った。皆、じっとウノ少佐を見ている。
「……美味しい、ですな」
どっと疲れた。俺だけではあるまい、皆気が抜けたような表情をしている。

「そ、そうか、美味しいか。では私も一つ頂いてみよう」
チュン参謀長がクッキーを一つ掴む。少しの間クッキーを見ていたが口の中
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