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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十四話 訓練
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い……。


二時間後、旗艦ハトホルの会議室に司令部要員、分艦隊司令官が集まった。コの字型に並べられた会議卓、その正面にはヴァレンシュタイン司令官の姿は無い。怖い司令官が居ないのだ、会議室の雰囲気は明るいとは言えなくともごく普通であって良いはずだ。だが、現実には全員が苦虫を潰したような表情をしている。司令官が居たら皆無表情になっていただろう。

「つまり何か、哨戒任務などやったことのないど素人が哨戒任務を行ったという事か、しかも御丁寧に座標を間違った……」
チュン参謀長がうんざりした口調で吐き捨てた。頭が痛いのだろう、しきりにこめかみのあたりを指で揉んでいる。

「無理も有りませんよ、元は星系警備隊、星間警備隊なんです。哨戒任務なんて真面目にやったことは無い、極端な事を言えば、せいぜいその辺をぶらついていただけです。今回の訓練もその調子で行った。で、いきなり奇襲を食らって慌てている……」
ブレツェリ副参謀長も同じようにうんざりしているのが分かる口調だ。

「国内の警備隊などそんなものでしょう。軍の艦を襲うものなどいない、哨戒などする必要が無いんです。同じ軍でも実戦経験が有るか無いかで全然違う」
スコット准将だ。元々国内の補給部隊の警備が主任務だったと聞いている。実情は良く知っているという事か。だったらもっと早く言ってくれればよいのに……。

「念のため、奇襲を受けた時点での各哨戒部隊の位置を確認しました。八つ有る哨戒部隊の内三つが本来居るべき位置に居ませんでした、今回の奇襲は偶然では有りません、必然と言って良いでしょう」
俺の報告に会議室の彼方此方で溜息が洩れた。天井を見る者、俯く者、頭を抱える者、皆様々だが笑顔だけは無い。

テーブルの上にはコーヒーが用意されているが誰も飲もうとはしない、そんな気分にはなれないのだろう。喜びの女主人の会議室は陰鬱な空気に染まっていた。

「ラップ少佐、今は大丈夫なんだろうな。また訳のわからん所を哨戒している、そんな事は無いだろうな。ここで奇襲を受けたら司令官閣下がどう思うか……」
「御安心ください、参謀長。会議が始まる前に位置を確認しました。問題は有りません」
誰も安心したような表情をしていない。まあ当然だろう、哨戒部隊の位置を司令部が一々確認しなければならないとは……、呆れてものが言えない。

「錬度が低すぎる、寄せ集めである事は分かっていたが此処まで酷いとは……。この状態で戦場に出たらあっという間に二階級特進だな。この艦隊が帝国軍から眼の敵にされるだろうという事を皆分かっていない」

「ここ最近大きな勝利が続いているからな。二万隻という数にも安心しているのだろう」
ホーランド少将、ワーツ副司令官がぼやく様な口調で話している。会議室の空気が更に暗くなった。陰々滅々、そん
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