第一章
[2]次話
ラッキークローバー
吉田剣は植物標本を集めることが趣味だ、それで交際相手の宮崎晴香にもよく言っていた。
剣は背は一七八程で黒髪を右で分けている、眉は黒くやや上に向いており目は細めで穏やかな感じだが光は強い。鼻の形も唇もしっかりとしていてすらりとしたスタイルが実にいい。
晴香は背は一六五程で整ったすらりとしたスタイルをしている、奥二重の目はきらきらとしていてやや茶色がかった髪の毛は細く首までの長さだ。細面で顎の先が細くなっており大きめの唇の色は奇麗なピンクだ。二人共八条学園高等部普通科の学生である。その剣が言うことはというと。
「クローバーはもう標本にしてるけれど」
「あの押し花のよね」
「うん、けれどね」
それでもというのだ。
「三つ葉ので」
「四つ葉はないのね」
「それはね」
幸せの象徴と言われるそれはというのだ。
「ずっと探してるけれど」
「ずっとなの」
「もう何年も探してるんだけれど」
それこそだ、彼が植物標本の趣味をはじめてからだ。
「そもそもこの趣味をはじめたのも」
「四つ葉のクローバーが欲しくて」
「それの標本を作りたくてね」
「幸せの象徴だから」
「そう、そう聞いてね」
それ故にというのだ。
「はじめたんだけれど」
「それがなのね」
「こればかりはね」
「見付からないんだ」
「そうなんだ」
どうしてもという口調で言うのだった。
「これがね」
「いつも探しても」
「クローバー自体はあるんだ」
それ自体はというのだ。
「学校の中にも公園にもね」
「まあクローバーは何処でもあるわね」
晴香もこう答えた、自分の記憶の中にあるクローバーの場所は実に多い。それこそ数えきれないだけある。
「学校の中でも」
「それでいつも探してるんだけれど」
それでもというのだ。
「ないんだよね」
「とにかくないのね」
「あれだよ、カードゲームでのレアカード」
剣は小学校の時に熱中していた趣味から話した。
「本当にね」
「それも激レアカードね」
「そんな感じだから」
「クローバーはあちこちにあっても」
「四つ葉はないんだ」
「それだけはなのね」
「これまで結構以上に集めたよ」
標本にする植物はというのだ。
「自分でもよくやったと思う位にね、けれどね」
「四つ葉のクローバーだけは」
「まだなんだ」
「全然ないの」
「本当にあるのかな」
この目で見たことがないのでだ、剣はこうも言った。
「実際に」
「それはあるでしょ」
これが晴香の返事だった。
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