第二章
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「あの国の若き司令官の」
「アッディーン司令ですね」
「彼は尋常じゃない」
「いつも鮮やかな方法で勝っていますね」
「相手の意表を衝くことも得意だ」
アッディーンの武名はサハラだけでなく人類社会にも知られる様になっていた、明らかにオムダーマンの快進撃は彼の手によるものだった。
「だから兵力で優位でもだ」
「それでもですね」
「容易にだ」
それこそというのだ。
「勝てる相手じゃない」
「負けるかも知れないですか」
「実際に緒戦で負けている」
そしてそこで選挙が行われナベツーラ達が政権の座に就いたのだ、ナベツーラはオムダーマン軍なぞ何でもないと豪語している。
「下手なことをしたら負けるのはこっちだ」
「負けてですね」
「滅びる」
そうなるというのだ。
「こっちがな」
「そうなりますか」
「そうだ、本当にだ」
「ナベツーラ政権はですね」
「大変だぞ、軍の人事もだ」
肝心のそれもというのだ。
「制服組もどうせな」
「ナベツーラの取り巻きがですか」
「就いてとんでもないことになるぞ」
「負けますかね、我が国は」
「そうなってもおかしくない」
ナベツーラ達が政権に就いた今はというのだ。
「本当に大変なことになったぞ」
「我が国が滅びるか」
「敵が強い時一番怖いことはだ」
それは何かというと。
「無能な人間がトップに立つことだ」
「こちらのですね」
「それで負けるからな」
「そうなるからですか」
「今回の選挙はな」
「国を滅ぼす」
「そうなってしまうかもな」
ハットゥーシは難しい顔でテレビを観ていた、そのうえでフィルドゥシーと仕事の話に移った。その間にだった。
ナベツーラは人事でだ、閣僚だけでなく制服組のトップも彼の取り巻きやお気に入りの者を任命した。どの者も軍の中でも人格、資質双方で悪名高い者達ばかりだった。
その彼等の名前を観てだ、心ある者達は絶句した。それはハットゥーシもだった。
「ミツヤーン、ホリーナム、キヨハーム、ペタシャーン、モトキーラム、エトンか」
「その面々は」
「最低最悪だ」
ハットゥーシはテレビのキャスター達が持て囃す軍の人事を観つつ今日も仕事で自宅に来ているフィルドゥシーに述べた。
「本当に」
「そんなに酷いんですか」
「どの連中もマスコミや野党の縁者ばかりでな」
つまりこの国を実際に動かしている、最高権力者達のというのだ。
「コネだけで軍隊に入ってコネだけで偉くなっていた」
「そんな連中なんですね」
「人格も能力もどうしようもない」
その両方でというのだ。
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