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老将
第六章

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 球界全体、ダイエーとは関係ないファン達までまさに驚天動地の如き有様となった。
「王さんがダイエーの監督だと!?」
「嘘だろ、これ」
「スポーツ新聞の飛ばし記事だろ」
「九州スポーツの記事じゃないのか!?」 
 大阪では大スポ、東京では東スポと言われる日本最高のネタ新聞だ、宇宙人が出て来るところが素晴らしい。
「これはないだろ」
「王さんは巨人だろ」
「巨人の監督までした人だろ」
「長嶋さんの次に復帰するんだろ」
「これだけはないぞ」
「絶対にな」
 誰もが言う、しかしだった。 
 この話は本当だった、王は実際にだ。
 ダイエーの監督に就任した、そして現場で采配を振るう。皆そのことに驚きを隠せなかったがそれでもだった。
 王ダイエーは動きはじめ根本は彼に現場を任せてフロントの仕事に専念して有力な選手をさらに獲得していった。
「藤井、斎藤、佐久本ってな」
「凄い選手獲得していくな」
「井口、松中、柴原、倉野ってな」
「根本さんらしいやり方で獲得していくな」
「囲い込んだりとかな」
「それは相変わらずだな」
 根本のそうした手腕は変わっていなかった。
「永井や篠原、星野もいいな」
「これだっていう選手を逃がさない」
「何かどんどん人材が揃っていくぞ、ダイエー」
「これはいいな」
「希望が持てるぜ」
「ベテランも取ってきてくれるし」
 彼等の状況はというと。
「廣田、武田、田村、長富にな」
「西村に松中か」
「メジャーからライマとかミチェッルも取って」
「外さないな」
「これだっていう人獲得してくれるぜ」
「何か夢見てもいいか?」
「ホークス優勝をな」
 それをというのだ、そしてだった。
 次々と選手を獲得してくれる根本にだ、中内は笑顔で言った。
「いや、ほんまにええ人事した」
「わしをダイエーに呼んだことは」
「わしは根本さんやって思った」
「チームを強くするには」
「正直最初の頃のうちはな」
 南海から買い取ったばかりはというのだ。
「もうそれこそや」
「正直弱かったですね」
「もう見ていて悲しなるまでな」
 笑って言うのだった、その時のダイエーのことを。
「弱かった」
「最下位になる様な」
「ならんかったらええ」
「そんなチームでしたね」
「最初はな。けれどな」
 こうもだ、中内は根本に話した。
「やっぱりチーム持ったらな」
「優勝したい」
「そう思うのが当然やろ」
「はい、野球をするのなら」
 やはりとだ、根本も中内に話した。
「優勝したいです」
「やっぱりそう思うな」
「けれどわしは自分が優勝させることは出来ません」
 根本は中内にこのことははっきりと言った。
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