第二章
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「そしてその通りなのですな」
「左様です」
「では拙僧をこれより」
源信は既に己が長く生きていると思っている、そして悟りにも達しているので己の命にはこだわりがない。それで怯えることなく言うのだった。羅刹女を前にしても。
「喰らうと」
「いえ」
女は源信の言葉に首を横に振って答えた。
「それはしません」
「しかし」
「はい、実はです」
女は悲しい顔をして源信に話した。
「それが嫌になりまして」
「人を喰らうことを」
「はい、この手を見て下さい」
こう言ってだ、女は源信に自分の手を見せた。すると。
指が五本ある、源信もそれを見て悟った。
「そういうことですか」
「はい、鬼には三つの悪徳しかありません」
「それが為に鬼の指は三本」
「しかし私は近頃です」
「五本になったのですね」
「そうなりました」
「二つの徳を備えられて」
源信もわかった、だから人間の指は五本なのだ。、三つの悪徳に二つの美徳を備えているからである。
「そうなのですか」
「私は確かに鬼の眷属で」
羅刹女、それであることは紛れもないというのだ。
「男の方の前にはこの様にです」
「美女の姿で、ですね」
「現れ女の方にはです」
「美男と」
「そうした姿で現れ人をたぶらかしです」
そしてというのだ。
「一門のところに連れて行きました」
「そこで、ですね」
「餌食としています、しかし近頃私に二つの徳が備わり」
「それで、ですか」
「そうです、ふと迷い込んだ寺で経をl聞いてからそれに怯えではなく心を感じ」
そしてというのだ。
「それからは日々寺で経を聞いているうちにです」
「徳が備わったのですか」
「不思議なことに」
「それはおそらく前世からの因縁です」
「私の前世の」
「人は悪事を為すと鬼に生まれ変わりますが」
しかしというのだ。
「それでいて前世で善行も行っていれば」
「私の様にですか」
「鬼であろうと徳も備わります」
そうなるというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「はい、貴女は鬼の眷属でありながら徳を備えたのです」
「そうだったのですか」
「そしてですね」
「はい、人を騙し喰らうのが嫌になりました」
悲しい顔でだ、女は源信に話した。
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