SAO:tr1―双子の兄妹―
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」
兄のアカウント名を発する。けどそれから続く言葉はなかった。
兄は振り返ることもなく、次の拠点である村の方角へと足を動かす。
その時にもう一度、クラインの声が投げかけられた。
「おい、キリトよ! キリカよりかは見劣りするけど、案外かわいい顔してやがんな! そっちの方が好きだぜ!」
続いてクラインは私へ向けて叫ぶ。
「キリカ! 男の姿よりも今の方が断然かわいいからな! 今度会った時は俺とデートでもしねぇか?」
それを聞いた私と兄は苦笑いで返す。
「考えておくよ」
「妹に手を出してんじゃねぇぞクライン。お前もその野武士ズラの方が十倍似合っているよ!」
この世界で初めてできた友達に背を向けたまま、兄は私の手を引き連れて、真っ直ぐ歩き出す。
不意に兄は振り返るのを見て、私も後ろへと振り返る。
そこにクラインの姿はどこにも存在していない。きっと言った様に、友達を探しに戻ったんだろう。
それを見た時、兄の…………心臓を締め付けられ、感情を歯を食いしばった表情を見て私は察した。
クラインを連れて行かない選択をしたことに兄は深い後悔をしている。自分を責めているんだ……クラインが連れて行かなかったのは自分のせいだと葛藤している。
兄のことだ……もし、どこかでクラインが死んだら、クラインが死んだのはあの時に俺が見捨てたからだと激しい自責をする。
止めなければ……兄のせいじゃないって言わなければ。
「……兄のせいじゃないから」
「え?」
兄は私がそんなことを言われるのが思いがけなかったのか、目をパチクリとしていた。
「兄がクラインを誘わなかったのは兄の責任でもない。クラインのせいでもない。しょうがないことなんだから。その……後悔しないでよ」
「……わかっている」
わかっているのなら、悲しい顔しないでよ。
……今の兄に何を言っても、気休めにもならないか。先ほどまで現実世界に帰れないという衝撃もあった影響もあるだろう。
「じゃあ、拠点に向かう前に最後に言わせて」
しっかりと兄の目を見て、私は伝える。ブラコンと言われ様が、私は兄にこれを伝えないといけなかった。
「例え周りの人達が嫌われても、世界から見放されてしまっても私だけが……兄の味方だから。だから……覚えてよね」
「キリカ……」
兄の顔がちょっとだけ和らいだ気がする。
それを確信する様に、笑みを浮かべていきなり私の髪を上からわしゃわしゃと撫で始めた。
「心配するなって、俺が強いの知っているだろ」
「いや、そうだけど……」
「まあ、でも心配させて悪かったな、俺はもう大丈夫だ。必ずお前を家に帰らせるからな」
兄が二カッと笑うだけで私はホッとする。
でも
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