SAO:tr1―双子の兄妹―
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対し、私とクラインは現実世界へ帰れないショックを一旦置かせて、一つ一つ聞く。
「MMORPGってのは、プレイヤーのリソースの奪い合い。簡単に言えば金とアイテムと経験値をよく多く獲得した奴だけが強くなれる。このままだと『はじまりの街』の周辺のフィールドは他のプレイヤーに狩り尽され、すぐに枯渇するだろう。効率良く稼ぐには、今すぐ次の村を拠点したほうがいい。俺は道も危険なポイントもルートも全部知っているから、レベル1の今でも安全に辿り着ける」
それを聞いた私は生き残るために兄についてく事を決断する。
けど、クラインはそれを聞き終わると表情が曇り始める。
「キリトが言っている事はなんとなくわかった……生き残るためには強くならないといけねぇ。でもよ……他のゲームでダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフトを買ったんだ。そいつらもログインしていて、さっきの広場にいるはずなんだ。悪いけど俺はあいつらを……置いて行くことはできねぇ」
「…………」
それを聞いた兄が今度は曇り出す。
きっとクラインはその友達を一人も欠けることなく連れて行きたいことを望んでいる。
でも、兄はそれ望んではいなかった。どれくらいいるかもわからない人達と多く連れて行く事に何らかのリスクがあると見ているからだと思う。
おそらくクラインと仲良くなっていなければ、きっとクラインを連れて行くことはしなかったと思う。
あるいは……仲間を守れなかった責任の重みを受け止められるかどうかで、悩んでいるのかもしれない。
兄は何も言えない状況の中、クラインは兄の心を読み取ったかの様に、強張っているものの太い笑みを浮かべた。
「いや……やっぱいいわ。ほんの数時間だけだけど、世話になったんだ。これ以上世話になるわけにはいかねぇよな」
「クライン……あんた」
「おいおい、暗い顔すんなってキリカ。俺だって、前のゲームじゃギルドの頭を張ってたんだ。今まで教わったテクで何とかしてみせら。だから俺の事は心配せずに、次の村に行ってくれ」
「でも……」
私は不安だった。大丈夫だと言っても絶対ではない。生きて欲しいと強く願っても、きっとどこかで神様の悪戯であっさり死ぬ事だってある。そう考えたら……不安だった。
言いたい。クラインも一緒に行こうよと言いたい。
でも、それを口にすれば私は兄に迷惑をかける。
それだけは絶対にしたくはなかった。
「キリト、キリカを連れて行け」
クラインは兄に私を連れて行くように推した。
兄は悩んで悩んで、数秒間考え続けて決断した。
「…………そっか。なら、ここで別れよう。何かあったらメッセージを飛ばしてくれ。行くぞ、キリカ」
兄は私の手を掴んで振り向こうとした時に、クラインが叫ぶ。
「キリト!
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