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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十二話 蛟竜
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前線指揮官よりも参謀としてシトレ元帥の補佐の方が合っているように思うが」
ヤン准将が困惑したような声を出すとヴァレンシュタイン准将が首を横に振った。

「面白くないのでしょうね、二十歳そこそこの若造に指示されるのが……。結構反発が有るようです。それを抑えるためにも……」
「前線で苦労をして来いと……」
「私だけじゃありません、ヤン准将、ワイドボーン准将もです」

「……しかし貴官はヴァンフリートでもイゼルローン要塞でも最前線で戦った。その事は誰もが知っている」
そうだ、ヤン准将の言うとおりだ。ヴァレンシュタイン准将がフォーク中佐などとは違い最前線で戦う事を厭わない軍人だという事は皆が知っている。

「艦隊を指揮したこともない人間が艦隊司令官の人事に口を出している。国防委員長の元には結構苦情が出ているようです。委員長はそれを逆手に取った、司令部から外し二階級昇進させて艦隊司令官にした。シトレ元帥の要請も有ったようです」
「……トリューニヒト国防委員長ですか」

ヤン准将の口調が渋くなった。准将はトリューニヒト委員長が嫌いだ。委員長がTVに映ると直ぐにチャンネルを変えてしまうくらい嫌っている。
「ヤン准将は国防委員長が嫌いですか」
「嫌いですね、あの男の下品な扇動演説を聞くとうんざりする。シトレ元帥もいつか後悔しなければ良いが」

露骨に顔を顰めたヤン准将を見てヴァレンシュタイン准将が笑った。
「本人と話したことは無いのでしょう」
「もちろん」
「政治家なんて外見と中身は違いますよ」
そう言うとヴァレンシュタイン准将はもう一度笑った。ヤン准将はますます顔を顰めている。

「ヴァレンシュタイン准将はトリューニヒト委員長と親しいのですか」
「親しくは有りませんね。ただヤン准将よりは知っています。なかなか他人を利用することが上手だ。今回も上手くしてやられました。私が艦隊司令官とは……」

「軍も政府も准将を高く評価しているんです。艦隊司令官になるのは准将の本意ではないかもしれませんがもう少し喜んではと申し上げています。せめて今日だけでも……」
ミハマ少佐はヴァレンシュタイン准将を宥めるように話している。そして准将がまた苦笑を漏らした。

「私にはそうは思えません……、理由はお分かりでしょう。ミューゼル中将と直接戦う事になる」
ヴァレンシュタイン准将の言葉にヤン准将もミハマ少佐も黙り込んでしまった。ミューゼル中将? 確か帝国軍の指揮官だったはず、有能だって言われているけど……。

「あの、ミューゼル中将というのはそれほど強い指揮官なのですか?」
「ユリアン」
僕の質問にヤン准将が少し強い声を出した。訊いちゃいけなかった? でもヴァレンシュタイン准将は僕を見ると僅かに微笑んでくれた。

「彼が戦場で敗
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