無印編
ジュエルシードを求めて
過去からの来訪者
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た。
「……ならばお前を倒せば良いこと」
そう言ってグレンは剣を大上段に構える。一見隙だらけだが、グレンの反射神経と剣速はその隙を無意味にする。実質隙など無い。
いかに《絶対防御》と謳われた俺の魔法でも次の一撃は受け切れないだろうという確信があった。かといってかわすのはもっと無理だ。距離を詰められ、不可視の一撃で殺られる。
「殺しはしない。しかし少し寝ていてもらうぞ」
「その殺気で言われても信じられないが」
一閃。
音すらも置き去りにした斬撃が、展開した防御陣をいとも簡単に粉砕し俺に迫る。
あわやそれが致命的な攻撃になる寸前、俺はギリギリで仕掛け終わった自分の神器を起動した。
「起きろ」
その様子はまるで世界が変わるようだ。俺とグレンの周りの世界が漆黒に染まり、グレンの攻撃を乱す。
「しまっ……」
「遅い」
ようやくこれの正体を思い出したらしくグレンが対応しようとするが、黒の暴風が吹き荒れグレンを包み込む。キン、キン、と澄んだ音が鳴りグレンの周りに暴風が収束していき、やがて黒い球体の中へ奴を閉じ込めた。
「《星屑》はこうも使える。忘れたか?長期戦は望むところだ」
無形神器《星屑》もまた《神の涙》と同じ素材で作られている。本来この素材は不壊属性というものにより、細かく砕いたり変形させるといったことは出来ないが、魔法で概念を一部捻じ曲げる加工を施すことによって神器として形を成している。俺の神器は無数の欠片へそれを分割することによって『形』を無くしたものだ。逆に今のようにある程度形を作るとなると、作用してる概念改変魔法を部分的に緩めることになり少々処理に時間を要するのだ。
故に俺が神器を使用する場合、戦闘はある程度長期化せざるを得ず、その間は自前の防御魔法でどうにか凌ぎきることになる。
「今回のジュエルシードはお前らにやる。それで今日のところは終いだ」
この拘束とて後数秒もすれば破られるだろう。本当ならそんな柔なものではないが、ことグレン相手ならばそんな不条理が平然と起こり得る。何よりかなり消耗してしまったので、そろそろ俺が限界を迎えつつある。
焼け石に水だが、やらないよりはマシ程度に拘束を強化し結界から離脱する。適当な地面に魔力を込めた結界維持の為のアンカーを突き刺し、なのはの気配がする方に向かっていく。
厄介な相手だ。しかし同時に複雑な気持ちになる相手でもある。
グレンは強い。強いが、逆に奴にはそれだけだった。人外の強さを手に入れながら、どこまでも純粋に人であった。
本来、それは喜ぶべきものだ。何より得難いものだ。
しかしそれは、奴を焦燥に駆らせる楔でもあったのだった。
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