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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十一話 密謀
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こう言いました。“出世させて責任を持つ立場にしないとヤン准将は何時までも仕事をしませんからね”

ヤン准将は戦闘詳報の内容に不満そうでした。シトレ元帥が戦闘詳報を承認するのを苦虫を潰したような表情で見ていたのです。ヴァレンシュタイン准将はヤン准将の表情に気付いていたはずですが素知らぬふりでした。ワイドボーン准将も同じです。

どうやら出世させて責任を持つ立場にしないとヤン准将は何時までも仕事をしない、と言うのはヴァレンシュタイン准将だけではなくシトレ元帥、ワイドボーン准将も同意見のようです。

言わせてもらえば私も同感です。どう見ても今回の戦争ではヤン准将にはヤル気が感じられませんでした。能力は素晴らしいものが有るのですから否応なくその能力を使わざるを得ないようにする。ヴァレンシュタイン准将にとっては自分だって否応なく帝国との戦争に放り込まれたのだからヤン准将だって……、そんな気持ちが有るのかもしれません……。



宇宙暦 795年 6月 20日  ハイネセン エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



「君がヴァレンシュタイン准将か、話はこの二人から聞いている。若いがなかなかの人物だとね」
目の前に座った男は飄々とした感じで話しながら横に座っている二人に視線を向けた。彼の視線の先には愛想の良い笑顔を浮かべた男と渋い表情をした男がいる。

ヨブ・トリューニヒト、ジョアン・レベロ、ホアン・ルイ、そして反対側に座っている俺の隣にはシドニー・シトレ……。この四人が俺の協力者という事になるのだろうが、まあ何と言うか一癖も二癖も有る連中だ。プライベートで仲良くしたい連中じゃない。

しかし問題はそこではない。問題は此処にサンドイッチが無い事だ。何故だ? 前回同様シトレに拉致同然に連れ出された。連れて行かれた場所も同じだ。時間帯もほとんど同じ……。それなのにサンドイッチが無い! 俺の楽しみを何処にやった!

代わりに置いてあるのがピザだ。ピザが二枚置いてある。こいつらは客のもてなし方を知らん。ピザなんぞ冷めたら美味くないだろうが、それとも冷める前に話しが終わるという保証が有るのか? おまけに飲み物はコーヒーと水か……。ピザには合うのかもしれんが俺はコーヒーは嫌いだ。それに比べればサンドイッチは……。

「今回の作戦は完璧すぎるほどに上手く行った。人事面でモートン中将、カールセン中将を抜擢したことに不満を漏らした人間も大人しくなるだろう」
仕方がない、ピザを食べるか。二つのピザの内一つはツナ、もう一つはミートソースが主体のナスのピザだ、先ずはツナを一切れ……。

うむ、マヨネーズが、ベーコンが美味い! それとコーンだな、やっぱりツナとコーンはマヨネーズが合う。問題は、手が油でべとべとする事だ、だからピザは嫌なんだ。でも美味い
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