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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十一話 密謀
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ショナルに書き立てたそうです。

もちろん賞賛だけではありません。イゼルローン要塞を何故攻略しなかったのか? 新たに援軍に来た三万隻の艦隊を何故殲滅しなかったのか、当然ですが非難が出ました。完勝出来るのにその機会を逃がしてしまったと……。

そんな非難を抑えたのがトリューニヒト国防委員長でした。
「今回の戦争の目的は遠征軍の殲滅とイゼルローン要塞駐留艦隊の殲滅であり、シトレ元帥率いる宇宙艦隊はその作戦目的を完璧なまでに達成した。作戦目的以外の事で詳細な事情も知らずに非難することは不当である」

このトリューニヒト委員長の発言は多くの人に驚きを持って迎えられたそうです。委員長とシトレ元帥が協力体制を取っている事は皆が知っていますが、今回の大勝利で委員長がシトレ元帥に嫉妬するのではないか、協力体制が崩れるのではないかと思ったのでしょう。

トリューニヒト委員長はシトレ元帥との協力体制を維持することを選びました。シトレ元帥の軍事的成功を背景に自らの政治家としての影響力を拡大する。そしていずれは最高評議会議長へ……、それが委員長の青写真なのだとマスコミは報じています。そして予想以上にトリューニヒト・シトレの協力体制は強固だと……。

宇宙艦隊への非難もすぐに収まりました。イゼルローン要塞を攻略しなかったのも、敵艦隊を攻撃しなかったのも彼らを利用して帝国内部を混乱させようというヴァレンシュタイン准将の謀略だと理解したからです。

そしてカストロプ公の事は皆が驚きました。あの会談は同盟全土に流れたそうですが、ヴァレンシュタイン准将の言葉の前に蒼白になるミューゼル中将を始めとする帝国軍士官達が映っています。あれを見れば謀略ではありましたが事実の公表でもあると皆が理解しました。事実であればこそ効果は大きいと思います。

これまでヴァレンシュタイン准将は自分の両親の死に関して貴族の相続争いに巻き込まれたとは言っていましたが、帝国の為政者達によって用意された道具に殺されたなどとは一言も言っていませんでした。改めて帝国の統治の酷さが同盟軍、そして帝国軍将兵の前で明らかになったのです。多くの帝国人は自分達が何のために戦うのか、疑問に思うでしょう。おそらく帝国はこれから混乱するはずです。

六月十二日、首都星ハイネセンは帰還した宇宙艦隊を嵐のような歓喜の声で迎えてくれました。同盟市民は口々にシトレ元帥、ビュコック提督を初めとして各艦隊司令官、そしてヴァレンシュタイン准将、ワイドボーン准将、ヤン准将の名を讃えました。戦闘詳報はヴァレンシュタイン准将が作ったのですが、そこではヤン准将がシトレ元帥に対して的確な助言を行ったことになっています。

どうして、そのような事実とは違う事を記載するのか……。ヴァレンシュタイン准将に問いかけると准将は溜息交じりに
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