舞い込んだ依頼
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明しようと思う。空から眺めた街の形は円形で、北には壮大なヒンメルン山脈が広がり、天然の防壁の役割を果たしている。残りの東・南・西は重厚な城壁に囲われており、人々の暮らす街はその城壁の内側にある。中心には領主の館が聳え、その周囲を囲うように貴族や豪商の住まう高級住宅街が建ち並ぶ。街の治安は同心円状に外に広がる度に悪くなっていき、壁際の地区は貧民街……いわゆるスラムと化していた。ハリー達の目指す建物も、そのスラムの一角にあるのだ。
「あの、ハリーさん。インヴェスさんて人は本当に腕利きなんですか?」
「何故だ?」
「だって、そんなに腕のいい探偵さんならもっと稼いでいて、こんなスラム街に住んでるなんて……」
「おっと、この辺の地区の悪口はそれくらいにしておくんだなミーアちゃん。そうじゃないと命はないよ?」
ミーアが周りに視線を走らせると、スラムの住民らしき者達が聞き耳を立てており、剣呑な雰囲気を漂わせている。自分達が必死に暮らしている場所を、『こんな所』呼ばわりされては彼等の怒りも尤もだろう。しかしハリーと自分達の実力差を弁えているからこそ、彼等は襲ってこない。スラムという弱肉強食の世界では、危険を察知できない奴から死んでいくのだ。
「さぁ、先を急ごう」
「は、はいっ」
少し青褪めながらも、懸命にハリーの後を追うミーア。そしてしばらく走った所でハリーが急停止。頑強な鎧竜の甲冑に、ミーアは強かに鼻を打ち付ける事になる。
「い、いひゃい……ハリーさん!いきなり止まらないで、って着いたんですか?」
「あぁ、ここだ」
ハリーが示した先にあったのは、今にも崩れそうなレンガ造りのボロアパート。ハリーは遠慮した様子もなく、ズンズンと中に入っていく。ミーアもその後に続く。
中は外見通りに埃っぽく、所々蜘蛛の巣が張っていたり穴からネズミが出てきたりと余計にボロく感じる。そんなアパートの4階まで上がっていくと、とあるドアの前でハリーが立ち止まる。そのドアには、
“ペット探しから殺人事件の捜査まで!インヴェス探偵事務所”
と書かれた板キレが斜めに打ち付けられていた。そのドアをガンガンと殴りながら、
「オラインヴェス!中に居るんだろ!?客連れてきてやったぞ!」
と叫ぶハリーの様は、その凶悪な見た目も相俟って、さながら借金取りに見えなくもない。すると、中からガチャン、ゴトン、ズリズリ……という何だか物を引っくり返しまくっているような音が聞こえる。
「んだよぉ。俺ぁ今から寝るトコだってのに……」
頭を掻きつつドアの隙間から顔を覗かせたのは、一人の男だった。
瞬間的に見たミーアの印象は、『綺麗な人だなぁ』だった。身長はハリーよりも頭1つ分低いくらいの推定190cm。筋
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