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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十話 ニーズホッグ、又の名を嘲笑する虐殺者
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か、いい気なものだ」
「自分の手を汚さないのは連中の得意技だろう、ロイエンタール」
ミッターマイヤー少将が珍しく嘲笑を込めて言い放つ。同意するかのように会議室に嘲笑が起きた。無口なアイゼナッハも顔を歪めている。

「ミューゼル中将はどうお考えなのかな」
ビッテンフェルト少将の問いかけに会議室に沈黙が落ちた。皆が窺うように顔を見合わせている。中将自身、帝国を変える事を望んでいるとヴァレンシュタインが指摘した。あれは真実なのか……。

「分からんな、だが変えたいと思っているにしろ現状では無理だ。地位も権限も低すぎる。そういう意味でも次の戦い、勝つ必要が有るだろう」
ケスラー少将の言葉に皆が溜息を吐いた。

「ヴァレンシュタインが出てくるな、ニーズホッグが出てくる。奴、間違いなく俺達を殺しに来るぞ」
苦虫を潰したようなワーレンの声だった。

ニーズホッグ、いつの間にか兵達がヴァレンシュタインに付けた異称だ。ニーズホッグは黒い飛龍であり北欧神話においては最も邪悪な存在だとされている。古代ノルド語で“怒りに燃えてうずくまる存在”という意味を持ち、“嘲笑する虐殺者”、”恐るべき咬む者“という異名も持っている。

ニーズホッグは世界樹ユグドラシルの根から世界の滋養を奪い世界に暗い影を及ぼしているがその滋養だけでは飽き足らず、死者を喰らい、その血を啜るとされている。そして世界の終末ラグナロクの日には、世界樹ユグドラシル全体を倒してしまう……。

世界樹ユグドラシルを帝国に替えればそのままヴァレンシュタインに当てはまるだろう。“怒りに燃えてうずくまる存在”、“嘲笑する虐殺者”、”恐るべき咬む者“ まさにヴァレンシュタインだ。ヴァレンシュタインこそがニーズホッグだろう。

世界の終末ラグナロクを生き延びた邪悪なる魔龍ニーズホッグ。我々はこれからその邪悪なる魔龍を相手に戦わなくてはならない……。



帝国暦 486年 5月25日    イゼルローン回廊    ミューゼル艦隊旗艦 タンホイザー  ラインハルト・フォン・ミューゼル



皆、納得していなかった。私室に向かいながら会議室での会話を思い出し溜息が出た。無理もない、俺自身納得しているとは言い難いのだ。他者に納得しろと言う方が無理だろう。

軍事的勝利、一体どの程度の勝利を求めているのか……。大艦隊による艦隊決戦か、それとも単なる局地戦での勝利で良いのか……。オフレッサーがどの程度の艦隊を率いてくるかにもよるだろうが、今の帝国に大規模な出兵が可能なのか。宇宙艦隊は司令部が全滅、そして精鋭部隊も全滅しているのだ。

不安要素しかない、また溜息が出た。部屋に戻るとTV電話の受信ランプが点滅していた。誰かが連絡してきたらしい。オフレッサーかと思ったがリューネブルクだっ
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