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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十話 ニーズホッグ、又の名を嘲笑する虐殺者
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っておく。ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯も火中の栗を拾う気は無いという事だ」
その言葉にまた視線が会議室を交差する。

「つまり娘を皇帝にするのは危険だと見ている、そういう事ですか」
「そういう事だ、クレメンツ副参謀長」
会議室の中に緊張が走った。皇帝にするのは危険、両家とも反政府活動が酷くなり革命が起きるのではないかと恐れている。オーディンの政治状況は我々の想像もつかないほど厳しいものなのかもしれない。

「では例のカストロプの件は真実なのですな」
「……」
「閣下はカストロプの反乱について事前に御存じだった。この秘密も御存じだったのでは有りませんか」

ロイエンタール少将の言葉にミューゼル中将の、そしてケスラー少将の表情が歪んだ。俺があの時問いかけ答えて貰えなかった質問だ。カストロプの件はあくまでヴァレンシュタインの邪推であって真実ではない、それが帝国の公式見解だ。だがその見解には誰もが疑問を抱いている。

ミューゼル中将とケスラー少将が視線を合わせた。溜息を吐いてミューゼル中将が話し始めた。
「詳しい事は言えないが真実だ、全てを知るのは帝国でもほんの一握りの人間だけのはずだ。私も全てを知っているとは言い難い」

「不思議なのはヴァレンシュタインです、彼はどうやってそれを知ったのでしょう」
メックリンガーが訝しげに問いかけてきた。俺も同感だ、亡命者の彼が何故それを知っていたのか……。

「彼はカストロプ公が自分の両親を殺したことを知っていた。多分そこから辿ったのだろうが……」
「しかし、それだけではいささか……」
ミューゼル中将とメックリンガーの言葉は歯切れが悪い。

「知らないはずの事を知っている人間がいる、ですか」
ワーレンが両腕を組んで呟くように吐いた。その言葉に皆が考え込む表情になった。そして時折ケスラー参謀長に視線を向ける。

「参謀長、訊き辛いのだが……」
「フィーアの事かな、ビッテンフェルト少将」
ケスラー少将の言葉にビッテンフェルトが済まなさそうに頷いた。それを見てケスラー少将が大きく息を吐く。あまり楽しい話ではないのだろう。

「彼女は私の幼馴染でお互いに好意を持っていた間柄だった。だが彼女は貴族だった、平民の私とでは身分の壁が有った。士官学校を卒業と同時に私は彼女から離れた。そして疎遠になった……」

「ヴァレンシュタインの言ったクラインゲルト子爵家を調べた。確かに辺境に存在した。フィーアもそこにいたよ。当主の息子と結婚している、男の子が生まれたそうだ」

皆複雑な表情をしている。ヴァレンシュタインの言葉が事実であったこと、そしてケスラーの気持ちを忖度したのだろう。ケスラーも複雑な表情をしている。
「夫である男性は軍人だった。今回の遠征軍に参加していたそうだ
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