X.決戦
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「終わったか?」
「ああ。だが、千年桜からあんなに離れたとこで良かったのか?」
「良いんだ颯太。あれ以上近付いて、また投げ飛ばされては困るからな。春代さん、そちらはどうですか?」
「整っておりますわ。」
ここは千年桜の前だ。とは言っても、かなり距離を置いている。近付きすぎて、また彼女に力をぶつけられては厄介だからな。
先ず…颯太には、結界に使う榊を四方の地面に立ててきてもらい、千年桜を中心とした大きな結界を張った。春代さんには、その中に舞を舞えるだけの小さな結界を作る様に頼んであったのだ。
榊には小さな鈴が付けてあるが、それは結界が作動しているかを音で確認するためのものだ。ま、魔除けとしても使えるためでもあるが。
「臨。」
-チリン…。-
「兵。」
-チリン…。-
「闘。」
-チリン…。-
僕がやっているのは、密教系の結界の張り方に近い。有名になった九字は元来、僧が修行時に張る結界からきている。まぁ諸説あるが、基本は気合いだと僕は考えている。とは言え、霊力の全く無い人間に、結界など張りようもないがな。
「在。」
-チリン…。-
「前!」
-リーン…。-
最後の掛け声に、鈴の音色が変化した。結界が起動した証だ。しかし、これで終わりではない。
「光もて闇を打ち払い、我らが道を明かりで満たせ!」
僕はそう言うと、懐から呪符を取り出して空へと投げた。それらは鳥に姿を変化させ、四方の榊の上に飛んで行き散った。すると、その場に蒼白い光が炎のように灯り、全体を幻想的に明るく照らし出したのだった。
「春代さん、そちらも。」
「はい。」
僕に言われ春代さんは、直ぐ様小さな結界を張った。春代さんの張る結界は、僕のそれとはかなり異なる。
花岡家の遣り方は、基本は植物に頼る遣り方なのだ。場所や仕事の内容によって、様々な結界の張り方があるようで、今回は藤の植木を四方に置いてあった。舞いの舞台としても趣があって、彼女なりの気遣いを感じさせた。
「お入り下さい。」
結界を張り終えたようで、僕と颯太を春代さんは内側へと招き入れた。その刹那、地から湧くような女の声が響いた。
- 己…再び私の邪魔を致すか! -
あの千年桜に憑く亡霊だ。しかし、今度はそう簡単にはやられはしない。
「風は鎖となり時は杭となりて、道を遮る者を束縛せん!」
僕は直ぐ様そう叫んだ。
これは初代櫪家当主が編み出した言霊であり、櫪の血族であれば大なり小なり使える。しかし、血族以外ではいかに霊力があっても使えない、あまり役には立たない代物でもある。
「では、浄化の<火>から始める。」
僕は二人に合図し、手にしていた朱雀の扇を開いた。
- 小さきも 温もり感ず 灯火の 一
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