プロローグ 始まりの咆哮
始まりの咆哮W
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壁や床には火挟や槌などの工具が大量に壁に掛けられたり立て掛けられたりしていた。おそらく、すべて鍛治の為の道具だ。そして一夏は空間の一番奥にある火の入っていない炉に目が留まった。その瞬間、頭の中に膨大な量の情報が流れ込んでくる。鍛治の手順、道具の扱い、先達が打ってきた数多くの剣や武器。それらの固有蓄積時間は脳に入ってきた時点で映像化され、それらの情景を一度に、それも大量に見せられるのはおそらく一般人であれば廃人確定の事象だろう。
「あ・・・がっ・・・!ああっ・・・??」
「一夏??どうしたのですか??」
傍目にはいきなり呻き声を上げて苦しみだしただけだろうが、本人としてはこの痛みは少々耐えづらい。急に脳の活動が無理矢理活性化させられたから当たり前ではあるが。もうどれくらい呻き声を上げていたか覚えてもいないが、急に頭痛がふっと消えた。何故自分がそう動いたかは分からなかった。体は考えるよりも先に動き、炉の前に立つと自分は右手を炉にかざしていた。
「鍛錬を開始する」
そんな言葉が表情筋が一切動いていないであろう自分の口から出てきた。次の瞬間には冷たかった炉に業火が宿り、地面が盛り上がり2メートルほどの人型の土人形が2体出現した。彼らの片方は壁に立て掛けられてあった向槌を手に取り、もう片方は部屋の端に保管してあった鉄を持ち上げて炉に放り込んで平嘴と手槌を一夏に手渡して地面に還っていった。燃えさかる炎に包まれて鉄はすぐに溶け出し、一夏が気を見計らって平嘴で固定したまま金床の上に乗せる。そこに土人形が向槌を振り下ろして概形を成形していく。鉄が冷めてくれば再度炉に突っ込み、また成形する。そうやって、ある程度、形が出来れば次は一夏が持っている手槌で細かい部分を調整していく。この作業は数十分にも及んだがラ・フォリアはその間一言も漏らさず一夏の後ろで黙って見ていた。そんなラ・フォリアでさえ、驚く事があった。椅子から立ち、ラ・フォリアを一瞥した一夏の目が爬虫類のそれのように瞳孔が縦に開き、目が黄色く染まっていたのだ。おそらく固有蓄積時間が目に見える形で出てきた結果と思われるが、アルディギア人に見られる氷河を思わせる瞳の面影は見られなかった。まだ赤熱し、赤い雫を滴らせる剣を平嘴で挟んだまま土人形の胴体に手をかざして小さく文言を呟いた。
「急速冷却・研磨」
次の瞬間、平嘴で挟んだ刀身で土人形の胸を貫いた。土人形はたちまち唯の土塊になり、剣もろとも地面に崩れ落ちて小さな土の山を築いた。そこに刺さっていたのは炎に反射して輝く、刀身だけの一振りの剣。それを丁寧に山から摘み上げて近くにあった木製の台に乗せ、ラ・フォ
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