I.予兆と櫻
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は鬼か妖魔かとも噂されているが、その見目を保つために人並み以上の努力をしているのを、僕はよく知っている…。
僕が暮らしているのは此花町と言う場所だが、この町はかなり広い。南側は商店街などが密集して賑やかだが、僕の屋敷があるのは北側だ。一言で言えば田舎と言っていい。
そんな中で僕は気儘にのんびりと過ごしている…はずなんだが、このご時世「解呪師」なんてもので食い繋いで行くのは心許ない。このだだっ広い屋敷を守るだけでも一苦労なため、仕方なく物書きなんかもやっている。家政婦も彌生さんを含め七人いるし、給料払わないといけないわけで…。
「先生!」
あぁ…担当の久居君が来たようだ…。今日はやけに早いご到着だな。
「お早う。あと三頁だから、ちょっと待っててね。」
「先生…。そんな呑気なこと言ってないで、今すぐ仕上げて下さい!さぁ、早く!締め切り一週間も延ばしてるんですから!」
いや…本当は二十頁以上あるのだがね…。さてはて、どうしたものかなぁ。
「取り敢えず、朝食を摂ってからにしようか。君もどうだい?恐らく、彌生さんは用意してると思うがね。」
「はぁ…それでは…って!先生!」
「分かったよ!しかし、朝食を食べないと、書けるものも書けなくなってしまうよ?」
「……仕方ありません。朝食を召し上がってからということで…。」
はぁ…疲れた。朝から久居君の顔を見ると、なんだか一日が曇って見えるよ。僕が悪いんだけどね。
「それじゃ、食堂に行くとするかね。」
そうして僕らは食堂へ行き、朝食を頂くことにした。案の定、久居君の分もしっかりと用意されていたのは言うまでもない。
「ところで先生?最近、蓬来寺跡近くで幽霊が出るって噂、知ってますか?」
「幽霊だと?」
全く、朝から幽霊なんて話聞きたくはないんだがなぁ…。
しかし、蓬来寺跡は櫪家の管轄になってるはず。僕の耳に入らないなんて…。
「はい。なんでも、十二単みたいな古めかしい着物を着た女に何人か襲われたらしいって。それも決まって千年桜に続く道を歩いている時だとかで、新聞にも書いてましたよ?新聞、読まないんですか?」
読まないな…。ついでにテレビも見なけりゃラジオも聞かないからなぁ…。僕にとって世間なんてどうでもいいのだから。ま、最近の流行なんかは若い家政婦さんから聞いたりしはするが…。
「彌生さん。あなたは知ってましたか?」
「いいえ、旦那様。」
彌生さんも知らない…か。僕は思考を巡らせてみたものの、櫪家の伝承に該当するような話はなく、あの千年桜も櫪家とは無関係だ。
「彌生さん、後で南から颯太を呼び寄せといてほしい。ま、いつ来れるか分からないが…。」
「畏まりました。」
僕はそうして後、やっと朝食へと手をつけた。久居君はとっくに食べ終えて、食後の珈琲なんぞを優雅に啜
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