プロローグ
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食料事情にも金銭的な面でも、草食竜は優秀であった。
とは言え、何はともあれまずはビールだとばかりにハリーはジョッキを掴む。氷魔法が得意だというマスターのお陰か、エールはキンキンに冷やされており、最高の喉越しだ。一気に飲み干すと、お代わりを頼む為にパティを呼ぶ。その間に料理にありつくというのが、ハリーお決まりのパターンだ。
フォークとナイフを掴み、肉を切る。ナイフに大して抵抗がなく、スッと入っていくのを確認したハリーは、おや?と思う。草食竜の肉というのは、総じて筋張っていて固いのだ。野生で暮らす彼らは外敵から逃げ回る為に余分な贅肉などは付いていない。北部の寒い気候なら多少脂も付いてくるのだが、温暖な気候のミナガルド周辺ではそれは有り得ない。
「はーい、エールのお代わりお持ちしましたぁ〜!」
「おいパティ、まさかこの肉って仔竜の肉じゃないだろうな?」
仔竜の肉というのは草食竜の子供の肉の事である。生態系を保護する意味も込めて、仔竜を狩るのは禁止されている。流れ弾や誤って殺してしまった物は仕方無いとされてはいるが、基本はご法度。納品された仔竜の肉は一般市場には流れず、貴族などの上流階級に納品される、らしい。らしいというのはギルドがその取り引きをしているというのを公式には認めておらず、噂話として聞こえてくる話、というレベルの事だ。当然だが、仔竜の肉を食うのも基本的にはご法度とされている。
「やだなぁ、違いますよぉ!それは養殖された草食竜の成竜の肉です」
「養殖?モンスターをか」
草食竜も大人しいとはいえモンスターである。一度暴れ出せば手が付けられなくなる。
「なんか、どっかの大商人が始めたらしいですよ?ハンターさんに草食竜を生け捕りにしてもらって、繁殖させて、牧場で飼うんですって」
「へぇ……まさに養殖だな」
「殆ど歩かせないで餌を食べさせるから、プクプクに太って脂が付くからお肉が柔らかいらしいです」
言われてみれば、成る程確かに染み出してくる肉汁が多い。しかし慣れ親しんだあの赤身ばかりの肉が食いたかったハリーは、少しガッカリする。
「やっぱり美味しくないですか?」
「顔に出てたか?すまん」
「いえいえ、他のお客さんからも不評なんですよ。試しに仕入れたんだけど、失敗したってマスターぼやいてましたし」
どうやらハリーは在庫処分を手伝わされたらしい。何がオススメだよ、ったく……とぼやきながらハリーはジャリライスをかっこむ。
ジャリライス、と名前が付いてはいるが、本当に砂利が入っている訳ではない。米と呼ばれる穀物の他に、麦やら豆やら、他の穀物も混ざった物で、言わば雑穀米の様なものと言えばイメージ出来るだろうか。勿論混ざりっ気無しの白米も有るのだが、ハリーはこ
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