暁 〜小説投稿サイト〜
強欲探偵インヴェスの事件簿
プロローグ
[3/6]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
…当たり前だが。一部の冒険者は英雄願望にほだされて、難しい依頼をこなそうとする輩もいるが殆どはモンスターの胃袋に消えるか、野垂れ死にである。

 そんな世界だからこそ、難しくて実入りの少ない依頼は長期間放置され、冒険者達の間では漬けすぎて塩っ辛くなってしまった野菜になぞらえて『塩漬け依頼』と揶揄される。そんな依頼をこの強面の巨漢冒険者は優先的に片付けているのだ。それに見合った実力に加え、困っている人を放っておけないという生来の気性が、彼にそうさせているのだ。顔に似合わず他人に優しく、出来る限りの全力を尽くす……そんな彼を地方の村では『勇者』だとか『英雄』だと呼ぶ者も少なくはない。本人はただの苦労性だ、と思っているのだが。




「くわ〜!さっすがハリーさん、実力もあるのに自惚れないし、わざわざ塩漬け依頼を片付けてくれるなんて……よっ、冒険者の鑑っ!」

「褒めても何も出ないぞ、ベッツィー。そんな事よりも道中討伐したモンスターの精算を頼む」

 カウンターにドカリと置かれた革袋の中には、多種多様なモンスターの部位が入っている。これは『討伐証明部位』と呼ばれる物で、そのモンスターを討伐した、という証である。依頼を達成した証明にもなるし、移動の道中に襲ってきたモンスターを討伐した褒賞金にもなる……重要な物だ。勿論、それを誤魔化して楽に儲けようとする不届き者もいるのだが、ギルドがしっかりと鑑定・査定するので不正は直ぐに暴かれ、不届き者は相応の罰を受ける。資格の剥奪だったり、最悪の場合は賞金首にされて他の冒険者に狙われる事になる。世知辛い上にヤクザな世界なのだ、ここは。

「うわ、これまた大物ばっかり……これは査定に時間かかりますよ?」

「いいさ。俺もさっき帰ってきたばかりだ、久しぶりに美味い物でも食って、のんびり待ってるさ」




 そう言ってハリーは受け付けを離れ、併設されている酒場に向かう。冒険者というのは酒好きが多い。依頼を達成すれば祝杯を上げ、失敗すれば反省し、次へと切り替える為に仲間と杯を交わす。酒とハンターは切っても切れない間柄である。そんな冒険者ギルドに酒場が併設されている、というのは何ともちゃっかりした話である。ギルド直営の酒場だから品質もしっかりした物であるし、仕事終わりに移動する手間が無いというのが大きなメリットであり、今日も酒場は冒険者でごった返している。

「らっしゃい……ってハリーじゃねぇか!いつ帰った?」

「あぁ、ついさっきな。元気そうだなマスター」

 言葉を交わしているのはこの酒場をギルドから任されているマスターだ。元冒険者であり、怪我を理由に引退した後にこの酒場を任されるようになった。見た目は筋肉質でスキンヘッド、額より少し上から左の頬にかけて大きく残った傷痕が迫力をプラス
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ