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強欲探偵インヴェスの事件簿
プロローグ
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 ガチャリ、と重厚な音を立ててその男は入ってきた。身の丈は2mに届こうかという上背に、幅広のハズのドアが窮屈そうに見える程の横幅。まるで、岩の塊がそのまま動いているのでは?とさえ錯覚しそうなその男は、油断なく周りを警戒するようにキョロキョロと鋭い眼光を飛ばしている。その顔は樫の木を削り出して作ったかのように武骨で、ウルフカットと言えば聞こえはいいが、どう見てもざんばらに刈り込んだようにしか見えない黒髪と、揃いの黒い瞳がそれを人の顔だと認識させてくれる。そしてまた、彼の纏う装備品も彼の迫力を増させている原因の1つであった。

 旅装のきほんであるマントは羽織っている物の、その下に着込んでいる鎧は金属で作られたプレートメイルでも無ければ、動物の皮を鞣して作られた皮鎧でもない。一見するとその質感は岩。岩を削って作られたようにすら見える暗灰色の鎧。しかし知識のある物からすればその鎧がとんでもない逸品だと気付かされる。

「おい、アレってまさか……」

「あぁ、鎧竜の甲冑だ」

 ジロジロと無遠慮にその男を観察していた酔っ払いらしき男達が、小さく言葉を交わす。鎧竜……モンスターの跋扈するこのイシュタルと呼ばれている世界でも、上から数えた方が早い強さを誇る種族・飛竜種。その中でも巨体とその甲殻の堅牢さから鎧竜の名で呼ばれる飛竜の素材をふんだんに使った鎧と兜、一揃いの防具。それだけの物を揃えるには、一頭や二頭そのモンスターを屠ったとしても足りない。そして鎧が一級品であるならば、武器もまた業物。

 その大男が振るうに相応しいサイズの大剣がその広い背中に背負われている。鈍い鋼色に輝くソレの表面には、何やら幾何学的な紋様が彫られている。魔術師の素養がある物が見れば武器などに『属性』を持たせる為の魔術回路を形成していると気付く事が出来るだろう。そしてその属性は『雷』。一度振るえば紫電が迸り、敵を感電させるだけの電流が流れる事が容易に窺える。そして魔法を纏わせた『魔剣』と呼ばれるその剣が、そこらの装備とは一線を隔す高級品である事もまた事実。それだけで男は只者ではないのだ、と雄弁に物語っていた。




「ようこそ、ミナガルド冒険者ギルドへ……って、ハリーさんじゃないですか!お久しぶりですねぇ」

 この偉丈夫はハリーという名前らしい。しかも中々の有名人のようだ……まぁ、この容姿で目立たないという方がどだい無理な話ではあるような気がするが。

「あぁ、かれこれ3ヶ月ぶり位になるか?」

「指名依頼の火竜の番(つがい)討伐に向かって以来ですもんねぇ!……にしても、帰り遅すぎません?」

 ハキハキと高いテンションで喋り続けるギルドの受付嬢。やはり接客業の為か、かなりの上玉である。シャープな輪郭に目鼻立ちの整った顔。それだとキツい印象になり
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