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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十四話 万の便りと二筋の煙
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い若者だったよ――この戦が終わる頃にはああして下士官兵から学び続けられる奴が先を担うべきだ。
将家だ、貴族だ、と何もなしに肩で風を切れるような時代じゃなくなる、この戦争が終わったころにはそこに至る道が出来ている」

 新城は黙して答えなかった。群衆を道具と扱うことに躊躇ない癖にどこか無条件で民本主義(democracy)と人類という種族を信仰している。将家の家門を残すことに執着し政官界を泳ぎながらも守旧的な将家が消え去ることを当然のように語る。長い付き合いを経てもこの男の思想的本質がどこにあるのか時折わからなくなる。

「豊久」 「なんだ」

 新城はないまぜになった旧友への疑問をたった一言の問いに煮詰めて投げかけた。
「――貴様、楽しいか?」


 皇紀五百六十八年 八月十六日、最後の補給便と共に独立混成第十四聯隊は虎城へと帰還した。その翌日に〈帝国〉軍先鋒が六芒郭と接触、主要三街道における予備兵力を懸念したアラノック中将は鎮定軍本営へ増援を求め、本軍到着まで六芒郭包囲を行う事を決断する。この判断は後世まで評価が分かれるものであったが―― 一国の運命の分岐点となる戦いを告げるものであることは確かである。

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