第45話<対抗意識>
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ハッとした。
「違う、そんなつもりじゃ……」
私が顔を上げると青葉さんがウインクをしている。
「お……」
何かを言いかけた私を制するように青葉さんは唇の前に指を立てた。
「分かってますよ! ……そ・ん・な・こ・と」
「おいおい」
私は脱力した。
「ちょっと、記事風に言ってみただけ!」
まったく、もう青葉さん……趣味が悪いよ。
すると、ようやく私の横に日向も来た。それまでの私と青葉のやり取りは全く気にしないように彼女は言った。
「あいつらも悔しいだろうな……」
日向の視線の先には山城さんか。その方角を私は再び双眼鏡で覗いた。
山城さんの側に、やっぱり泣いているらしい第六駆逐隊の面々が群がっていた。
……あ、一緒に泣いている。
あの姿を見ると私も悪かったと思えてきた。
……そうか、よほど悔しかったか。
だが、あの深海棲艦はどうなったかな……。
私の想いを受け継ぐように日向が呟いた。
「司令、大丈夫です。過去の事情は私も何となく存じ上げておりますから……」
私は「え?」と日向を振り返る。彼女は真顔だが少し微笑んでいた。
「司令があの深海棲艦を誰だと思われているのか、過去の経歴も含めて伺ってますので」
「君には詳しく話した事は無いはずだが……あれ?」
日向の後ろで青葉さんがブイサインを出していた。そうか彼女が情報源か。
「あぁっ!」
私は肝心なことを忘れていた。
「結局、大淀艦隊は、あれから大丈夫だったのか?」
「……」
そこで何かを受信した日向が言った。
「司令、秘書艦がお呼びです。一緒に参りましょう」
「ああ……」
私たちは直ぐに軍用車に乗り込むと鎮守府の正面玄関へと向かった。
良くも悪くも日向は一途だ。私は彼女の横顔を見てそう思うのだった。
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