第45話<対抗意識>
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互いの無線が聞けたりするんだよな……ってことは?
「おい、日向ぁ!」
私は思わず振り返った。
「……」
だが、そこに居た日向は、いつも通りのすまし顔だった。
(日向って、真面目な顔して実は確信犯なのか?)
戦闘能力が高い彼女だ。それはつまり頭が切れるということを意味する……だから日向は策略家ではないか?
いやしかし、あの一途さは、むしろ真逆とも言えるか?
……そんな悶々し始めた私に構わず、どんどん話を続ける青葉さん。
「まぁ山城さんにとっても日向さんって日頃から、すっごく対抗意識を燃やす相手ですから」
「へ?」
それは知らない。
すると龍田さんが加わる。
「山城さんと基本設計は同じなんですよぉ日向さんって……それが戦艦を通り越して航空戦艦でしょ?」
「……」
そういえば、そんな噂話を聞いたことがあったような。
青葉さんも腕を組んでしきりに頷く。
「だから、もう戦果から恋までメラメラ対抗意識が……あ、でもこれは美保鎮守府では有名な話ですからオフレコではありません」
「なんのこっちゃ」
私は半分、呆れた。
彼女は白い歯を見せて悪戯っぽく笑った。
「だからぁ別に隠す必要はありませんってば」
「何だ、どういうことか?」
よく分からないが、呆れると同時に急に美保の艦娘たちの背景がボンヤリと見えてきたような気がした。
「そりゃ山城さんも、ちょっと考え過ぎだろ?」
……私の言葉にニタニタしている青葉さん。
そして不思議な笑みを浮かべている龍田さん。
……当事者の日向は少し距離を置いて瑞雲を調整しながらポーカーフェイスのままだ。
でも艦娘も繊細だよな。
「山城さん……このままだと、ヤバくないか?」
私の心配する言葉に顔を見合わせた青葉さんと龍田さん。
二人は『大丈夫だから心配ない』といった感じだったが、さすがに気になるよ。
私は軍用車に近寄ると龍田さんに双眼鏡は無いか聞いた。
スローテンポで縄梯子を片付けていた龍田さんは「どこかしら」と言いながら双眼鏡を探す。
「ありました……はい」
龍田さんから双眼鏡を受け取った私は鎮守府の脇から埠頭の向こう……
大山の下の海面にピントを合わせた。
薄い大山と埠頭が見える……あ、山城さんが海の上で泣いている。
私の横に青葉さんが来て続けた。
「あと司令が作戦中止命令を出されましたよね?」
「ああ」
……やだな。泣いている山城さんの姿に落ち武者のような鬼気迫るオーラが感じられるぞ。
山城さんの映像に青葉さんの声が被る。
「そこで一矢報いようと意気込んでいた山城さん、結局最後には司令にまでトドメ刺されちゃいました」
……私は
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