黒衣を狙いし紅の剣製 07
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を奏し、螺旋矢は俺の目と鼻の先を通過した。
直後、壁に衝突したそれは爆発を引き起こす。その威力からして直撃していれば木っ端微塵になっていてもおかしくない。非殺傷設定を切っている状態で人に向かって代物ではない。
意識を一瞬とはいえクロから外したことに不味いと思ったが、先ほどまで雨のように飛来していた魔力矢が止まっている。意識をクロに向け直すと、少し驚きを覚えている顔を浮かべていた。
「今のも避けちゃうんだ……やれやれ、今ので当たらないとなるとこのままやってもジリ貧ね」
「やれやれなんて口にした割にまだ余裕がありそうだが……」
「まあね。正直私としては射撃戦ってそこまで得意じゃないし」
一歩でも判断を誤れば俺は間違いなく死んでいる。
そう思えるだけ技量を披露しておきながら得意ではないというのは嘘だと思いたくなる。が、クロの態度からして嘘ではないのだろう。
クロは手にしていた黒弓を消したかと思うと、両手を広げながら交差させる。
「トレース……オン」
クロの両手に赤色の魔力は集まり始めたかと思うと、それは剣の形へと姿を変える。
姿を現したのは片刃の剣が2本。右手にあるものは刀身が白く、左手に持たれているものは逆に黒い。おそらく2本1組にデザインされたものだろう。
俺はデバイスの名前や形を決める際の参考として、聖剣や魔剣といった伝承にある武器の資料などを見ることがある。クロの持つあれは……その中で夫婦剣と称されていたものに酷似していると言ってもいい。
武器を生成する能力にあの夫婦剣……よく覚えてはいないが、昔見た資料の中にそういう能力を持つ名の無き英雄が居たと書かれていた気がする。
もしかしてクロは……いや、可能性の域を出ない。だが古代ベルカ時代に生きていた聖王の遺伝子だって残っていた。それに……もしもそうならあの男との関係が良好でなかったことにも納得が出来る。
『フフフ……フハハハハハ! いいぞ、その調子だ。もっと黒衣の魔導剣士を痛めつけてやれ!』
「グリードさん……いやグリード。全てはお前の差し金か?」
『呼び捨てとは生意気だな小僧。年上にはもっと敬意を払ったらどうだ。まったく……さすがはあの研究ばかりしていた男の息子で、あの女が育てた男だよ。反吐が出る』
反吐が出る?
それはこっちのセリフだ。俺の父さんや義母さんがあんたとの間に何があったのかは知らない。特に義母さんは性格が性格だけに人から恨みを買うこともあるだろう。
だからその罵倒に関しては甘んじて受け入れてやる。だが……自分自身の手を汚さないどころか、子供に対象を襲わせる。その考えだけは気に入らん。
「あんたが俺や義母さん達にどんな恨みがあるのか知らないが……自分の手でやったらどうなんだ?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ