暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
節目の日

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閉じに行く川内。そっか……急に寒くなったのは、あいつが窓を開けたからか……しかしどうしよう……腰が抜けて立てない。

「ちぇ〜……これじゃ夜戦に勝てな……って、どうしたの?」

 未だに腰が抜けて立てない俺を見て、窓を閉じて戻ってきた川内が俺を見下ろす。きょとんとした眼差しが妙に綺麗で、それがまた俺の神経を逆なでしてくる。

「川内、手」
「ん? て?」
「手!」
「私のカシワギせんせーは甘えん坊さんだなぁ」
「誰のせいだよ侵入者のくせにッ!!」

 くっそ……俺が腰が抜けて立てないのをいいことに、俺の頭を優しくなでなでしてきやがる……腹立つなーこいつ。Hello Worldの喜びを思い出させてくれた恩は感じているが、今日のこいつはやることなす事、いちいちムカついてくる……ッ!!

 ムカつく笑顔と共に差し出された川内の手を借りて、俺はなんとか立ち上がった。まだ腰がちょっとガクガクしてるが、しばらく安静にしていれば元に戻るはずだ。腰が砕け落ちてしまわないよう細心の注意を払い、俺は川内を教室へと案内した。

「せんせーの腰、つっついていい?」
「やったら『侵入者よッ!? 侵入者に襲われているわッ!?』て大騒ぎするからな」
「ひどっ」

 川内をいつもの席に座らせ、俺はその隣に座る。さっき川内がいたずらの為に窓を開け放っていたせいで、教室内は若干寒い。だが川内はそんなことまったく意にも介さないようで、まさに精一杯立ち上がってる最中のPCのモニターを、相変わらずのブロードウェイスマイルで瞳をキラキラと輝かせながら凝視していた。

 こいつとも、もうそこそこ長い付き合いになるけれど、結局何も変わらないままだなぁ……初めての授業のときから何も変わらない、あの時の、賑やかでうるさくて、夜戦にばかり気が行く、夜戦バカのままだ。自分の席のパソコンにも電源を入れた後、うるさいほどに眩しく笑う川内の横顔を眺めながら、俺はそんなことを考えてしまう。

「……あ、そうだせんせー」
「ん?」
「今日は予定を変更したいんだ」
「お? なんか作りたいものでもあるのか?」
「うん」

 自分の足元のメッセンジャーバッグを開き、川内はその中にもぞもぞと手を突っ込んで、一冊のファイルを取り出した。そのファイルを開き、中身を見せてくれたのだが……中にはたくさんの人の住所氏名、そして電話番号が記載されてある。

「今年はもう年賀状書いちゃったけど、確かWordでも年賀状作れるよね?」
「作れるな」
「んで、先に住所のリストを作っとけば、それを読み込んでWordで相手の住所の印刷出来るんでしょ?」

 んー? 差し込み印刷のこと言ってるのか? 確かにExcelかWordのどちらかで住所録を作っておけば、それを読み込んではがき印刷
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