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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十四話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その4)
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しい夏のような季節だった。そして今はヴァレンシュタインが支配する寒く陰鬱な冬の季節だ……。彼、ヴァレンシュタインを倒さない限りこの冬は終わらないだろう……。



宇宙暦 795年 5月 7日 11:00 宇宙艦隊総旗艦 ヘクトル  ミハマ・サアヤ



戦闘が開始されたのは五月六日の十八時二十三分、イゼルローン要塞駐留艦隊が同盟軍の後背を衝こうと押し寄せてきたのが同六日の二十二時三十八分でした。それ以降、約十二時間が経ちますが戦線は膠着しています。

同盟軍は正面の帝国軍遠征軍には第五、第十、そしてシトレ元帥の直率部隊を当てています。中央にシトレ元帥、右翼に第五、左翼に第十艦隊です。後背から来た駐留艦隊には第一、第十二艦隊が対応しています。

帝国軍遠征軍も後方に約一万隻の艦隊を置いています。おそらくは同盟領からやってくる新手の部隊に対応させるためでしょう。そのため帝国軍の正面兵力は四万隻程度、同盟軍とほぼ同数ですから膠着状態になるのは止むをえません。

総旗艦ヘクトルの艦橋には穏やかな空気が漂っています。とても戦闘中とは思えませんが作戦が順調に進んでいる所為でしょう。唯一、想定外だったのはミューゼル中将の存在ですが、それも作戦の遂行には問題ありません。少なくともヴァレンシュタイン准将はそう考えています。

艦橋の会議卓にはシトレ元帥を囲んでマリネスク准将、ワイドボーン准将、ヤン准将、ヴァレンシュタイン准将がいます。私とグリーンヒル中尉――この四月で中尉に昇進しました、万歳昇進です――も席に着くことを許されました。皆、適当に飲み物を飲みながらスクリーンと戦術コンピュータを見ています。

「結構激しく駐留艦隊は攻めてくるな」
「第一、 第十二艦隊を自分の方に引き付けておきたいんだろうね」
「手を抜くとどちらかを遠征軍の方に向けられると考えているか……」
ワイドボーン准将とヤン准将が戦術コンピュータを見ながら話しています。

「やはり第一艦隊は少し動きが鈍いようだな」
シトレ元帥がコーヒーを飲みながら話しかけてきました。元帥の表情はちょっと面白くなさそうです。確かに駐留艦隊が激しく攻めてくるのに対して第一艦隊は少し持て余しているように見えます。第十二艦隊が一緒でなければ結構苦しかったかもしれません。

「止むを得ないでしょう。第一艦隊は首都警備と国内治安を主任務としてきました。帝国軍との戦いなどもう随分としていません、実戦経験など皆無に近い……」
「……」
マリネスク准将の言葉に皆が頷きました、ヴァレンシュタイン准将もです。

「一番頭を痛めているのがクブルスリー提督でしょう」
「それはそうだ、いずれは軍の最高峰に登ると見做されているのに此処でこけたら左遷だからな、おまけに総司令部には相手が誰だろう
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