暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
食事の予定は……

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たく読まず……つまりパソコンが何を訴えているのかをまったく確認せず、『はい』をクリックしていた。

 怖くてパニックになってしまう人と、とりあえず『はい』を押してしまう人。その共通点は、『メッセージを読まない』ということだ。

「ひぇええ……んじゃ、ワシの操作がダメだったの……?」
「はい」
「完全に消えちゃったの?」
「一縷の望みもなく……」
「なんとかならないの……?」
「可能性はゼロです……」
「そっかー……まぁ、しかたないね! 練習だと思って、もう一回最初から作りますよ!!」
「そう言ってくれると助かります! 俺もできるだけフォローしますから!!」

 爽やかな笑顔で再挑戦を誓ってくれたコウサカさん。そして、そんなコウサカさんのへこたれない明るさに心を打たれた俺。がっちりと固い握手を交わす、二人の震える男。

「先生! フォローをよろしく頼みますよ!!」
「こちらこそ! 素晴らしい『夏祭り計画表』を、もう一度作りましょう!!」
「先生っ!」
「コウサカさんっ!!」
「貴公……」

 向かいの席から、呆れ果てるソラール先輩の声が聞こえた。希少価値の極めて高い先輩の突っ込み? 諦観? の声を聞きながら、俺とコウサカさんは、固い握手を交わしたあと、熱い抱擁で震える互いをたたえ合った。

 ……さて。今晩は、あのアホと晩飯を食いに行く約束をしている。

――カシワギせんせー! 私はオーソドックスに単装砲で行くから!!

  でもせんせーは、魚雷でも連装砲でも、何使ってもいいからね!!

 これは、昨晩おれが『お前は酒は飲めるか? 飲みたいか?』と聞いた時の、川内の返事だ。あいつの頭の中では『夜に飯を食う』イコール『夜戦』という、もし証明されればノーベル理不尽賞間違い無しの方程式が、成立してしまっているらしい。そこに邪気はなく、純粋にそう信じているから始末に負えない。ひょっとしたら、俺は今晩、その方程式の論破をしなければならないのかも知れない。そう考えると、先が思いやられる。

 コウサカさんの計画表の作成を手伝う傍ら、そんな心配事が頭をかけめぐり、俺はさっきのテンションの高さとは似ても似つかぬ、フラットでダウナーな気分になった。頭を抱えている俺とコウサカさんがプルプルと震えていると、俺達の席の向かいで授業をしている、神通さんとソラール先輩の声が聞こえてくる。

「神通、そこの計算式には、絶対参照を使用する必要がある」
「絶対参照……とは?」

 おー絶対参照かー。あれはExcelを扱う上では必須のワザだ。ぶっちゃけグラフやデータベースと同じかそれ以上に重要なワザだと俺は思ってる。神通さんには、ぜひとも物にしていただきたい。

 ……そういや今日の川内も、f4を使った連続操作をやる予定
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