Side Story
少女怪盗と仮面の神父 45
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
(…………なんか……、ふわふわする……)
程好い陽光の下で緩やかな波間に揺られているような、干したての布団に包まって午睡に興じているような、温かく心地好い浮遊感の中。
(……とりあえず……顔面往復平手打ちを一回、直後に握り拳で腹部強打……は、確定事項よね……。本当は蹴りのほうが得意なんだけど、今は自分の足裏に傷が有る分、庇い気味の小さな動きで勘付かれて避けられる可能性が高いし……そうね……。さりげなく近付いた所で素早く引っ叩いて、驚いた隙に透かさず身長差を利用して下から上へ捻じ込み、衝撃で空高く舞い上がるような一気入魂の一撃をお見舞いしてやろう。さすがの怪物様でも、まさか、満面の笑みを浮かべた子供にいきなり全力でぶん殴られるとは思わないでしょう……。ふふふ……余裕の大人顔が情けなく歪む瞬間……とーっても楽しみだわぁ……。泣き顔とか苦痛に踞る姿とか、全っ然想像付かない辺りが滅っ茶苦茶腹立たしいんだけどね……ッ!)
自分の意識が浮上していると気付いたミートリッテが真っ先に考えたのは、極めて重大な罪を犯したアーレストへの制裁方法だった。
エルーラン王子に命令された「二度目」は状況や立場的に仕方ないとしても、教会での「一度目」は多分、勧誘を持ち掛ける為に二人きりで話せる環境を作りたかっただけで、それならわざわざ眠らせる必要なんてなかった。女衆の手綱は既に握ってたんだし、ちょっと工夫すれば他に遣り様は幾らでもあった筈だ。しかも、事前に何の断りも無く乙女の無防備な寝顔を衆目に晒させた挙げ句、素知らぬ顔で堂々と覗き込んでくるとか。
これはもう、全世界の女性に対して宣戦を布告したも同然の暴挙である。
聖職者? 貴族? だからどうした。
この世に生きる総ての女性達の「女性としての矜恃」を守る為にも、ヤツには他ならぬ被害者の手で相応の罰を与えてやらねばなるまい。
まったく……間抜け面全開で口をかぱーっと開いてたり、万が一にも涎を垂らしてたらどうしてくれるんだ! ハウィスだけに見られるのならまだしも、同居もしてない不特定多数の人間に暢気な寝顔を見られたり、煩いかも知れない鼾を聞かれて喜ぶ神経は持ち合わせてないんだっての!
あんたも一度、でっかい道のド真ん中で仰向けになって数時間お昼寝してみれば良いわ! 人前で眠るって行為がどれだけ恥ずかしい事か、よおぉーっく解るでしょうから!
…………いや、無理か。ヤツに一般民の感覚は通用しないんだった。あの神父なら本当にやりかねないし、なんなら通りすがりの馬にまで「御一緒にいかが?」とか誘い掛ける気がする。
んで、お付きの女衆が周りを取り囲みつつその道を一時占領して、神父様鑑賞会って名前のまったりとしてのんびりでほんのりピリピリなお茶会とか始めるんだ。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ