Side Story
少女怪盗と仮面の神父 45
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
くなってしまった相手に気持ちを叫んだって、今更どうにもならないことに変わりはないけれど。
あの日、自分自身の弱さや汚い部分をまざまざと見せつけられた気がして受け止め切れなかった真実を、しっかり思い出させてくれたから。
(今だけは。今この瞬間だけは、素直に感謝します。お父さん、お母さん。それに……)
こんな形で両親の気持ちを届けてくれた。
不思議な力を持つ、人外生物(確定)な聖職者にも。
「本当に……本当に、ありがとう……
……けど……やっぱり、一発は、殴らせて……」
「え?」
「だってほら、この世界には絶対に赦しちゃいけない罪ってあると思うの。具体的には、他人の意思を無視して強制的に眠らせるとか……、問答無用で眠らせるとか……、無理矢理に眠らせるとかねー……。うん。悪魔の世界へ引きずり込まれて、生きたまま骨の髄までバリバリ食べられちゃえば良いと思うよー……」
「ご、ごめんなさい……!」
(……ぅん?)
「……すなおぉー。ぶきみぃー……」
「だ、だって、エルーラン殿下から預かってた桃の果汁をクナートに渡して強引に眠らせた時も、バーデルへの避難を勝手に決めた時も、確かに貴女の気持ちは無視していたから……。そうよね。怒られても、仕方ないわよね」
(ぅんんー……? なんかへ……ん…… ……え。 あれ??)
「ちょっ、ちょちょ、ちょーっと待って?? え? ハウィス?? なんで??」
パチッと音を立てて目蓋を開き。
勢いよく上半身を起こして、見慣れた室内をぐるりと見渡せば。
ベッドの左横で木製の椅子に座り、しょんぼり肩を落としてる普段着姿のハウィスと目が合った。
アーレストへの恨み言を呟いてたつもりだったのに。
いつの間にか現実のハウィスとの会話になっていたらしい。
そう気付いた瞬間、ミートリッテの思考と血液が一気に凍結した。
「ごごっ、ごめんね! 違うの! 今のはハウィスに言ったんじゃなくて、外見と職で得しまくってる憎たらしいあんちくしょうにねっ??」
「……憎たらしいあんちくしょう?」
「そうそう! 日常的に胡散臭い笑顔とセリフを振り撒いてる、存在自体が嫌味としか思えない、むしろ嫌味が形になった……って…… あれ?」
不思議そうに首を傾げるハウィスの瞳を覗き込み。
ミートリッテも、自身の首をひねった。
「ねぇ、ハウィス」
「ん?」
「私、どれくらい寝てたの?」
途切れた記憶の最後に刻まれているのは、夜空に瞬く無数の星。
多分あと二、三時間で陽光が地平線上に顔を出すであろう頃合いだった。
今は、室内でも眉間に刻まれた浅いシワがはっきり見えるほど明るい。
うっすら開いている窓の外からは、暖かな潮風と涼しげな波の音
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ