暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
ムカつくけど、安心する
夜〜明け方
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に小ぶりの土鍋を乗せて戻ってきた。この土鍋は、俺がここに引っ越してきた時に『冬場に鍋したい時用に欲しい』と思って買っておいた、一人用の土鍋だ。仕事がアホみたいに忙しくて、ずっと使ってなかったやつだったが、今日やっと日の目を見たようだ。よかったな、土鍋。

 川内にお盆ごと渡された土鍋。きちんと蓋がされている。布巾が乗せられた蓋を開けてみると、だしのいい香りがもわっと広がった。

「んー……いい香り」
「へへ」

 土鍋の湯気をかきわけかきわけ、中を見た。美味しそうな黄金色の出汁の中に漂ううどんと具材たち。具はかまぼことほうれん草とネギと油揚げ。そして半熟卵。鶏肉と海老天は乗ってない。

「……海老天は?」
「せんせー熱出てるからさ。海老天と鶏肉はやめといた。食べたかった?」
「うんにゃ。多分乗ってても食べられなかった。助かった」
「そっか。よかった」
「ありがと川内」
「いいえー」

 うん。もし乗っかってたら、全部食べられないという失礼極まりない事態になっていたかもしれないからな。そこまで食欲が回復しているわけでもないから、正直これは助かった。

 お盆に乗ってるれんげで出汁をすくい、一口すすってみた。

「あぢっ!?」
「熱いから気をつけて……って、遅かったか……」
「俺、猫舌なんだよー。もっと早く言えよー」
「熱いからフーフーしてほしいの?」
「アホ」

 クッソ……なんでこいつは今日、こんなに活き活きしてるんだ。元気いっぱいなのはいもと変わらないが、今日は輪をかけて目がランランと輝いてる気がする。

 舌をやけどしないよう、丹念にふーふーして、もう一度出汁を味わった。カツオと昆布の熱々のおいしさが、俺の胸から腹にかけて、じんわりと広がっていった。

「……おいしい」
「そ? 市販の出汁使ったんだけどね。美味しいならよかったよ」
「おう」

 れんげの上にうどんを乗せ、同じくやけどしないよう、気をつけてすすった。うどんは冷凍の讃岐うどんをを使っているようで、コシが強い。ほうれん草はシャキシャキしてて美味しいし、玉子の加減も半熟でちょうどいい。

「お前、料理うまいな」
「そかな? いうほど大したことしてないよ?」
「料理上手なヤツって、大体そういうことを言うよな」
「そお?」
「うん」

 油揚げも、最初はちょっと『え?』と思ったが、実際に食べてみると結構うまい。うどんの出汁をめいっぱい吸って、噛むと口の中でジュワっと出汁が出てくる。出汁と変わらない味のはずなのに、油揚げから出てくる出汁は妙にコクがあるというか何というか……とにかく美味かった。

 ペースこそ決して早くはないが、俺は川内作の絶品鍋焼きうどんを夢中で食べた。『腹がへった』と言ったものの、食べてる途中に
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ