ムカつくけど、安心する
朝〜夕方
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あまりに間抜けな返答だったためか……それとも、大淀さんらしからぬ非常識な物言いのためか、俺の頭のグラつきがひどくなった。頭がいつもより重く、大きく感じる。まるで誰かから下方向に引っ張られているかのように、俺は上体を前のめりに倒しそうになった。
「う……」
「ほら。せんせー全然大丈夫じゃないじゃん」
川内が俺のもとに駆け寄り、肩を支えて、そのまま静かに仰向けに寝かせてくれた。俺の後頭部を、枕の上に乗るまで静かに支えてくれる川内の瞳は、ジッと俺を見つめていた。
いつになくまっすぐに……それこそ、授業中にプリントを作ってる時以上の、真剣な眼差しで俺を見つめる川内。言ってることは血迷ってるとしか思えない、非常識極まりない内容だと思うが、このアホの真剣さは見て取れた。
「お前の心意気は分かったしありがたいけどな……授業あるだろ?」
「休んだ。今晩はずっとせんせー看てるから」
アホ……それが不味いんだって……。
「んー……そろそろ晩ご飯かなー……せんせーは?」
「俺は……そうでもない……」
「んじゃ適当になんか作ろっか。冷蔵庫の中のもの、使わせてもらうね」
「人の話を聞いて……」
「せんせーの分もまとめて作っちゃうから、おなかすいたら言ってね」
「お、おう」
くそぅ……悔しいが、こいつが一緒にいるという事実が、妙に嬉しい……なんだか心がホッとする……。台所に向かうこいつの後ろ姿に、こんなにホッとするだなんて……。
川内がしゃがんで冷蔵庫を開け、『んー……』と唸りながら中を覗いている。
「想像以上に何もないねぇ……」
そらそうだろう。俺は料理が趣味というわけではない。自炊はしないわけではないけれど、常日頃冷蔵庫に入っているものといえば、お茶とかお漬物とかぐらいだ。
冷蔵庫の扉をバンと閉じた川内が、すっくと立ち上がった。なんでだ。あいつが台所に立ってる姿を見られることに、ものすごく安心できる……。なんか瞼が重くなってきた……
「ちょっと買い物行ってくる。せんせー、鍵ちょうだい」
「玄関の……げたば……こ……に」
川内がベッドのそばまで戻ってきた。俺のそばで、優しい微笑みで俺を見下ろしてくる。なんか新鮮だ。なんか……子供の頃に母ちゃんを見上げた時みたいな、妙な安心感がある。
「あと……鍵と一緒に俺の財布置いて……あるから、持って……」
違う……言いたいのはそれじゃない……。
「いいのいいの! 余計なこと心配しなくても! んじゃ、ちょっと行ってくるね!」
カラカラと笑いながら俺に背を向けて、玄関に向かう川内。違う、待て。
「ちょ……」
「ん?」
やってしまった……俺は、今まさに買い物に行こうとしていた川内の、右手を掴んで引き
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