暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
ムカつくけど、安心する
朝〜夕方
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多少頭がクリアになっている。身体にも少し力が戻ってきたみたいだ。少し眠って、多少体力が戻ってきたみたいだ。

「今……何時だ……」

 時間の感覚が狂ってる。枕元のスマホを手に取り、時刻を見た。午後6時……だいぶ寝てたみたいだ。

「もう……夕方か……」

 息を吸い、吐く。……浅い呼吸しか出来ない。体力は多少戻ったが、やはりまだ体調は戻ってない。しかも寒い。朝電話した段階で覚悟はしていたが、どうやら俺の身体は熱が出ているみたいだった。

「あ、今度こそ起きた?」
「まぁな……んー……」

 ベッドの隣に折りたたみテーブルを置いて、その前に座っている夜戦バカに返事をする。カーテンから差し込む光が、すでにオレンジ色になっている。もう年の瀬も近い。そら日没も早くなって……

「……って、なんでお前がいるんだよっ!?」

 やっと部屋の中の不自然さに気付いた。一人暮らしのはずの俺の部屋に、夜戦バカの川内がいやがった。

「おはよー」
「おはよーじゃないだろ!? げふっ……なんでここにいる!?」
「いや、カシワギせんせーが熱出して倒れたって聞いたからさ。お見舞いしにきた」

 いやいや、プラスマイナスゼロな表情でそんなこと言われても……。

「そもそも、なんでお前がここの住所を知ってるんだ……げふっげふっ……」
「大淀さんから、『今日の夜の授業は、私が見ますよー』って連絡もらってさ」
「……おう」
「んで、理由を聞いたら、せんせーが熱出したって聞いて」
「お、おう」
「んじゃ、私がお見舞いに行くよーって話したら、住所教えてくれた」
「げふっ……げふっ……鍵はどうした?」
「来たら開いてた。不用心だねぇ先生。……それとも、それに気付かないほど弱ってたのかな?」

 事の真相を、実にあっけらかんと川内は教えてくれた……ケロッとした顔で、『私、何か悪いことした?』とでもいいたげな、きょとんとした眼差しだ。

 そもそも、生徒さんに従業員の住所を簡単に教えるなんて、セキュリティ的にどうなんすか大淀さん……ッ!! 俺は今日、はじめて大淀さんに対する怒りがムラッと沸き起こった。

「んー……まぁわかった。俺は大丈夫だから、とりあえず帰れ」
「なんで?」
「なんでもクソもないだろうが……げふっ……お前は夜の授業だってあるだろ……!」

 急に頭がグラッとして、慌てて右手で頭を支える。何考えてるんだよこのアホ……いくら仲が悪くないからって……

「だいじょぶ?」
「いいからッ……帰れって……」
「帰らないよ?」
「なんでだよ……」
「カシワギせんせー心配だし」
「お前に心配されるほどじゃないって……」
「それに、大淀さんにも『んじゃカシワギさんお願いしますね』って言われたし」


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