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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十一話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その1)
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大きくなるだろう。

「当然ですが遠征軍は無理をしてでも撤退しようとするでしょう」
「こちらも当然ですが反乱軍はそこを撃つはずです」
「手酷い損害を受けるだろうな」
遠征軍の来援は期待できない、場合によっては敗残兵となって戻ってくる可能性も有る。思わず溜息が出た。

「あの男らしいやり方だ。戦力的に優位を築くだけではなく、相手を精神的に追い詰めて行く。そして気が付けばあの男の掌の上で踊らされている。ヴァンフリートで嫌と言うほど思い知らされた」

俺の言葉にケスラーとクレメンツが顔を見合わせた。二人とも深刻な表情をしている。ヴァンフリートで俺が味わったあの思いを分かって貰えただろうか。しばらくの間沈黙が落ちた、そして空気が重くなっていく。

「彼にとって誤算が出るとしたら我々の存在でしょう。二週間、イゼルローン要塞が堪えてくれれば要塞を守ることは可能です」
ケスラーが重苦しい空気を振り払うかのように明るい予測を口に出した。だが遠征軍の事は触れていない。偶然か、それとも既に見切っているのか……。

「参謀長の言うとおりですが戦う事は出来るだけ避けるべきです。今の艦隊の状態では戦闘はリスクが大きすぎます。要塞、そして駐留艦隊と協力しつつ反乱軍を打ち破るのではなく彼らに撤退を選択させる、その方向で戦うしかありません」

クレメンツの言う通りだ。この艦隊は未だ十分に訓練を積んでいるとは言えない。後二週間、いや一週間欲しかった。シュターデンが俺達がカストロプから戻るまで出立を待っていてくれれば……、また溜息が出た。

そうであれば艦隊の状態にもう少し自信を持てただろう。戦闘にも自信を持てたはずだ。どうにも上手く行かない、ケスラーは俺達の存在がヴァレンシュタインにとって誤算だと言っていたが本当にそうなのか、どこかチグハグな感じがしてならない。

「今我々が最優先ですべきことはイゼルローン要塞に向かう事、駐留艦隊と合流することです。急ぎましょう。向かっている途中で要塞から詳しい情報も入るはずです。戦闘の予測はそれからにした方が良い、今ここで考えても不確実な情報では不安感が増すばかりです」

ケスラーの言葉にクレメンツが頷く。確かにその通りだ、今ここで悩んでも仕方がない。出来る事を一つ一つ片付けていく、先ずはイゼルローンへ急ぐことだ。その事があの男の誤算になることを信じよう……。



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