暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
色々な意味で予兆

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きた……

「選択したら、『ホーム』タブの右の方に『標準』とか『索引』とか並んでるとこがあるでしょ」
「あるね」
「その中から『表題』てのを見つけて、クリックしてみて下さい」
「はいはい……ないよ?」
「隠れてるんです。下向き三角クリックしてみて下さい」
「えー……あ、あった。……うおっ!?」

 岸田さんがスタイルの中の『表題』を見つけてマウスでポイントした途端、サイズが大きくなりフォントも変わった『殉教者の魔弾』。

「ぇあ!? なにこれ!?」
「岸田さんが『ここはこの小説のタイトルだよ』とWordに教えたんですよ。そしたらWordが気を利かせて、タイトルっぽい書式設定を自動でやってくれたんです」
「いやでも! 文字大きくなんかしなくていいし、書体も変えなくていいのに!!」
「もちろんスタイル設定したあとでも、書式は変更出来ますから。フォントサイズとフォントだけ元に戻してみましょうか」
「めんどくさ……戻すなら、やらなくていいんじゃないの……?」

 スタイル設定のキモはね。書式が自動で変わるところじゃないんですよ岸田さん……。

「いいんです。『タイトルだよ』って教えたことに意味があるんです」
「ほーん……まぁいいや。書式を設定しなおせばいいのね?」
「はい」

 口をとんがらせ、ちゅーちゅー言いながらフォントサイズと書体を元に戻している岸田さん。なんかムカつくな。この『ほら、俺、男なのにこんなカワイイ癖があるんだよ?』みたいなところが。本人そんなつもりじゃないんだろうけど。そこがまたムカつく。計算づくでやっててもハラタツ。つまり、ちゅーちゅー言い出した時点でアウトなわけだ。

「はい戻したよ」
「あとは、他の部分もスタイル設定してしまいましょう」
「他の部分って?」
「各話ごとにスタイル設定をしていくんです。たとえば話が前編と後編に大きく分かれてるなら、その“前編”と“後編”に『見出し1』、各話のサブタイトルに『見出し2』て感じで」
「それも勝手に書式変わっちゃうの」
「変わっちゃうんで、あとでまとめて全部、元に戻しましょう。とりあえずは、各話のサブタイトルにスタイル設定をやってみて下さい」
「でもめんどくさ……」
「……」

 ここで俺は、わざと席を立ち、岸田さんから距離を取った。岸田さんが俺に文句を言いたそうにしているが気にせず、向かいのおばあちゃん、黄金糖のタムラさんの様子を伺いに行く。

「タムラさーん。調子どうですー?」
「んー。中々快調ですよーせんせーい」
「いい感じですねぇ。タムラさん上手になりました?」
「いやー、先生がいいから〜」
「そんなことないですって〜」
「う……」

 談笑する俺とタムラさんの様子をしばらく眺めていた岸田さんは、やがて無言で
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