暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
その名は岸田。小説家志望

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の大淀さんの様子を伺う。

「……」

 キーボードを打つ手が止まった。岸田さんの備考欄を眺めているのだろうか……。

「……カシワギさん」

 ……来た。目が合わないよう気をつけながら、改めて向かいの大淀さんの様子を伺う。……とても鋭い目で画面をじっと見つめている大淀さん。やっぱり声が冷たい感じがするのは、俺の気のせいだと思いたいっ……!!

「岸田さんですが……」
「は、はい……」

 ……何を言われるんだろう……なんて叱られるんだろう……ッ!? なんて俺が身構えていたら。

「……めんどくさそうですねぇ」
「はいッ! ごめんな……へ?」

 あれ? 反応がなんか予想外……?

「小説の執筆に必要な機能だけを知りたい……ですか」

 お、怒られるんじゃないの……?

「はぁ……それ以外は使わないから、教えてもらっても無駄だと言ってました……検討するとだけ伝えておきましたから、要望が100パーセント通るとは思ってないとは思いますけど……」
「うーん……機能の絞り込みがややこしいですね。それに、仮に私達が機能を厳選して教えても、あの性格の岸田さんが素直にそれを受け入れるかどうかは……」

 お、俺、怒られるんじゃなかったの? 大淀さん、怒ってるんじゃなかったの?

「あ、あのー……」
「はい?」

 まな板の上の鯉の気分は早く終わりにしたい……叱るなら、早くキチッと叱って欲しい……我慢できなくなった俺は、大淀さんに確認してみることにした。

「し、叱るなら、早く叱って下さい……生きた心地がしません……」
「なぜ?」
「え……なぜって……」
「……ぁあ、授業中の話ですか?」
「ええ」
「あれならもう注意はしましたし。それに、お気持ちはよく分かりますから。本当はいけないんでしょうけど」
「はぁ……」

 なんか拍子抜けした……俺が必要以上に怖がっていただけで、大淀さんは、俺のことを叱るつもりは、もうないらしい。それよりも、岸田さんの授業で何を教えるか……そちらのほうが問題なようだ。

「小説執筆に便利な機能ですか……」
「何でしょう……?」

 岸田さんか……なんか先が思いやられるな……授業の進行そのものもめんどくさいし、カリキュラムも特別なものを組まないといけない……おまけに、そのカリキュラムを本人が気に入るかどうかもよくわからない……これはけっこうな無理難題な気がする。俺もつい大淀さんと同じポーズを取って考え込んでしまう……。

「……ま、悩んでいても仕方ないですね」

 切り替え早いな……大淀さんはサクッとそう言うと、パソコンの電源を落とし、帰る支度をはじめる。机の上の自分の筆記用具をペンケースにしまい、それと数枚の書類をバインダーに挟んで自分のバッグの中
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