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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十九話 教官と教え子
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シュタインを高く評価していたな」
「優秀な生徒でした」
「優秀な生徒か……、今では反逆者だ、そして忌むべき裏切り者でもある」
嘲笑交じりの声だった。嘲笑の相手はクレメンツ准将か、或いはヴァレンシュタインか……。
「シュターデン少将、次の戦いは勝てますかな?」
「勝てる、今回は味方の足を引っ張る連中がいないからな。あの小僧に戦術のなんたるかを教えてやろう、楽しみな事だ」
そうクレメンツ准将の問いに答えるとシュターデン少将は笑い声を上げて去って行った。
その後ろ姿にクレメンツ准将が首を振って溜息を洩らした。
「駄目だな、ヴァンフリートで何故負けたのか、何も分かっていない。味方に足を引っ張られた等と……。あの戦いはヴァレンシュタインにしてやられたのだ、それ以外の何物でもないのに……」
「……」
「あれは戦争の基本は戦略と補給だと言っていた。戦略的優位を確立し万全の補給体制を整えて戦う、つまり勝てるだけの準備をしてから戦う……、その男が反乱軍の中枢にいる……」
勝てるだけの準備をしてから戦う、その言葉がやけに大きく聞こえた。当たり前のことではあるがその当たり前のことをどれだけの人間が真摯に行うか……。
「遠征軍が勝てる、いや優勢に戦える方法は?」
勝てる可能性が有りますかと問いかけて慌てて言い直した。俺の問いかけにクレメンツ准将が少し考えてから答えた。
「……イゼルローン要塞を利用した要塞攻防戦だろう。それならお互いに打つ手は限られてくる。大勝利は望めないかもしれないが、撃退することは難しくない。しかし……」
クレメンツ准将が口籠った。難しいだろう、ミュッケンベルガー元帥は前回の戦いで要塞攻防戦を行い不十分な戦果しか挙げられなかった。そして宇宙艦隊司令長官を辞職、退役している。それを思えばクラーゼン元帥にとってイゼルローン要塞での攻防戦は望むところではあるまい。元帥は華々しい戦果を望んでいる……。
「出来る教え子を持つと苦労するな、クレメンツ」
「からかうな、メックリンガー」
クレメンツ准将とメックリンガー准将の遣り取りに皆が笑いを誘われた。クレメンツ准将も苦笑している。しかし直ぐに笑いを収めた。
「優秀な生徒だった、非常に意志の強い、なにか心に期する物があると感じさせる生徒だった。だが私には彼がどのような軍人になるかは想像がつかなかった、まさかこんなことになるとは……」
「……」
「次の戦いの結末を良く見ておく事だ。ヴァレンシュタインがどんな男か、良く分かるだろう。その恐ろしさもな……」
クレメンツ准将はそう言うとグラスを一息に呷った。
四日後、財務尚書オイゲン・フォン・カストロプ公爵が宇宙船の事故で死亡した。遺児、マクシミリアン・フォン・カストロプが帝国に対して反乱を起こしたの
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