暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
少しは妹を見習ったらどうだ?

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 俺は立ち上がって川内の右隣に移動し、左手でマウスを持って、今しがた入力した『夜戦』の文字を選択して、フォントサイズを72ptにした。これだけデカけりゃ、フォントの違いもわかりやすいだろう。

「でかッ!?」
「文字をこのサイズまでデカくするのははじめてか?」
「はじめてヲ級を見た時と同じプレッシャーだ……!!」
「意味が分からん」

 ヲ級って何だよ……続けて俺は、二つの『夜戦』のうち、一つはMSゴシックにして、もうひとつはMS明朝にしてやった。太字にはしなくていいだろう。逆に細いほうが、二つの違いがよく分かる。

「ほら。これがゴシック体と明朝体の違いだ」
「へー……結構違うねぇ」

 ゴシック体は、フォントの線の太さが一定なのか特徴で、明朝体と比べてインパクトがある。一方の明朝体は、縦線と横線で太さが違い、線のさきっちょに筆で書いたようなでっぱりがあるのが特徴だ。ゴシック体と比べて、読んでいて疲れにくく、読みやすいらしい。

「この違いだけでも覚えておくと、それだけでかなりの文字を判別出来るようになる。絶対覚えなきゃダメってわけじゃないけど、損はない」
「せんせーは覚えてるの?」

 ……web界隈に生きる人はね……フォントの種類はある程度把握しとかなきゃいかんのですよ……昔を思い出して、なんだか少々げんなりした。

「せんせ?」
「あ、オホン……とにかく、今回のタイトルはゴシック体だから、ゴシックのやつを選べばいい。ゴシック嫌いってんなら、他のやつでも構わないし」
「はーい……でもさー。なんか“ゴシック”てついてるやつ、いっぱいあるよ?」
「ゴシックってついてて角が丸くなけりゃ、なんでもいいよ」
「そうなの?」
「同じ系統のフォントの違いに気付く奴なんて、デザイナーか天才か……変態かのどれかだ。だから同じゴシックなら、どれでもいい」
「はーい」

 つい弾みで『お前みたいな変態』って言いかけた。危なかったぁ〜……。川内は数あるゴシック体の中から、IPAゴシックを選択していた。そんなフォントが入ってるこの教室パソコンにも驚いたし、そんな渋いところを突いてくる川内のセンスにも驚かされた。

「IPAゴシックなんてまた渋いとこ突いてくるなぁ川内」
「よくわかんないけど、一番最初に見つけたから」
「貴公……」

 いつの間にかソラール先輩から伝染していた口癖を口ずさみ、俺は引き続き川内のプリント作成を見守る。書式設定を終えた川内は、続いてオンライン画像でのイラストの挿入に取り掛かっていた。お手本のプリントには、美味しそうなあんこもちのイラストと、餅つきを堪能する一組の老人カップルのイラストが入っているが……

「そのイラストにこだわらなくてもいいからな。好きなイラストを入れていい
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