巻ノ九十二 時を待つ男その六
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「修行をしようぞ」
「そうして頂けますか」
「拙者も技を授けたい、ではな」
「宜しくお願いします」
こうしてだ、望月だけでなく幸村も立花から直々に修行を受けて彼の体術を教わることになった。そしてだった。
立花の言う通り主従二人は主に夜に、立花が暇なら朝も昼もだった。山の中で激しい修行の日々を送った。
立花の力は強い、しかも剛力なだけでなく素早く尚且つ技も多彩だ。それで十勇士随一の体術の使い手である望月もだ。
最初は常に遅れを取った、だが。
次第にだ、動きがよくなってきてだ。
立花が投げようとすると抜け出てみせた、立花はそのうえで己の前に出て身構えた望月に笑って言った。
「それでよい」
「今ので、ですな」
「技をかけられててもな」
「それでもですな」
「諦めずに抜け出てじゃ」
「すぐに身構えるのですな」
「それでよいのじゃ」
こう言うのだった。
「今の様にしてな」
「再び戦う」
「生きてさえおればじゃ」
「幾らでも戦える」
「だからじゃ」
「最後の最後まで、ですな」
「諦めないことじゃ」
まさにというのだ。
「そうせよ、よいな」
「わかり申した」
「そしてじゃ」
立花はさらに言った。
「自分からもじゃ」
「技をかける」
「相手を先に殺す」
強い言葉でだ、立花は言った。
「それが大事じゃ」
「では」
「御主からも仕掛けて来るのじゃ」
技、それをというのだ。
「これまで以上にな」
「どんどん技を仕掛ける」
「それも必殺のものじゃ」
「そのうえで」
「相手を倒すのじゃ」
「戦の術ですからな」
「迷ってはならぬ」
立花はこうも言った。
「決して」
「何があろうとも」
「一瞬でも迷えばな」
「そこに隙が出来て、ですな」
「そこから死ぬ」
自分自身がというのだ。
「だからじゃ」
「迷わずに」
「うむ、相手を倒せ。よいな」
「わかり申した」
「それではな、修行を続けるぞ」
「それでは」
こう話してだ、そしてだった。
望月は立花から稽古を受けて技を身に着けていった、すると彼がこれまで知らなかった様な技もそこには多くあった。
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