巻ノ九十二 時を待つ男その四
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「悪いことよのう」
「確かに」
「我等は外に出る時はな」
「来ない方がよいですな」
「そうなる」
結果として、というのだ。
「やはりな」
「左様ですな」
「うむ、しかし時に備えてな」
「陸奥に入り」
「立花殿にお会いしようぞ」
「さすれば」
主従で話をしてだ、そしてだった。
陸奥に入った、そして立花の領地に入ってだった。
二人である茶店に入り喉を潤そうとすると後ろから声がした。
「待っていたぞ」
「まさか」
「うむ、ここまで来たか」
立花の声だった、幸村がかつて九州で聞いた。
「よく来られた」
「ご存知だったとは」
「勘でな」
「おわかりになられましたか」
「それに貴殿達があのままじゃ」
「九度山において」
「静かにしていることはないと思っておった」
これは立花の読みだった。
「それで何時かは来ると思っておった」
「そうでしたか」
「わしに教えを乞いに来たか」
「はい」
幸村は一言で答えた、後ろにいる立花に。
「ここまで」
「九度山からな」
「そうしました」
「わかった、ではじゃ」
「教えて下さいますか」
「そこにおる者にじゃな」
望月を示している言葉だった。
「わしの拳や柔術をか」
「授けて欲しいのですが」
「ならば毎夜山に来るのじゃ」
「山に」
「わしが今おる場の裏の山にな」
その山にというのだ。
「さすればな」
「毎夜その山で」
「教えを授ける」
確かな言葉だった。
「そちらの者にな」
「もうそのこともですか」
「身体をみればわかる」
立花は望月にも言った。
「それはな」
「そうでしたか」
「そうじゃ、では拙者の体術をじゃ」
「授けて下さいますか」
「ここまで来たのじゃ」
それならばというのだ。
「教えさせてもらおう」
「有り難きお言葉」
「しかし拙者の修行は厳しい」
このことをだ、立花は望月に断りを入れた。
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