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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十八話 最悪の予想
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、クラーゼンがそう考えると多少はクラーゼンに対して影響力が出るかもしれない。多少はだ、絶対的にではない。

他に宇宙艦隊でラインハルトを受け入れそうな人物がいるとすればメルカッツだろう。となるとメルカッツが遠征軍の中でどの程度の影響力を持っているかだ。クラーゼンがメルカッツを協力者として使うか、いずれは自分の地位を脅かすライバルとしてみるか、それによってメルカッツの影響力は違ってくる。

結局のところ遠征軍の総司令部で誰が力を持つかだ。クラーゼンが誰を頼りにするか、誰の影響を受けるか、それで遠征軍の手強さが決まる……。

俺がその事を言うとシトレが溜息を吐いた。
「やれやれだな、となると帝国軍の総司令部がどういう編成になるか、それを待つしかないか……」
「絶対とは言えませんが、それで少しは見えてきます」

味方の強さではなく相手の弱さに付け込んで勝つ。まあ戦争なんてそんなもんだが人間不信になるよな。こんな事百五十年もやってれば相手に対して憎悪しか生まれないって。溜息が出てきた。

結局会議はそれが結論になって終了した。帝国軍の殲滅を狙う以上、相手の姿が見えないとこちらも手の打ちようがない。バグダッシュは調査課の尻を叩くと言っていたが、冗談抜きでひっぱたいてほしいもんだ。

今度の戦いは出来る事なら殲滅戦を仕掛ける。帝国との間に和平を結ぶにはそれしかないということも有るがラインハルトの覇業を助けた連中を排除する必要がある。どう見ても同盟は人材面で帝国に劣る。それを解消するには戦場で補殺しなければならない。

いずれも戦術能力の高い連中だ。正面からの撃破では生き残る確率が高い、となればどうしても包囲するか二方向からの挟撃が必要だろう。何人出てくるか、何人殺せるか、それによって後の戦いが変わる。殺して殺して殺し尽くすか……、うんざりだな。

俺が自分の席に戻ろうとするとバグダッシュが相談したい事があると言ってきた。余り周囲には聞かれたくない話らしい、ということで宇宙艦隊司令部内に有るサロンに行くことにした。アイアースに有ったサロンも広かったが、こっちはさらに広い。周囲に人のいない場所を探すのは難しくなかった。

バグダッシュが周囲をはばかるように声を低めてきた。
「ミハマ少佐の事なのですが……」
「……」
サアヤの事? なんだ、またなんか訳の分からない報告書でも書いたか、俺は知らんぞ。

「彼女はこれまで情報部に所属していました。宇宙艦隊司令部の作戦参謀ではありましたが、あくまで所属は情報部という扱いだったのです」
「……」
まあそうだろうな、身分を隠して情報を入手する。まさにスパイ活動だ。その任務は多分、俺の監視かな。

「しかし本人は納得がいかなかったのでしょう。情報部の仕事は自分には合わない、人を疑う
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