暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
先輩は変な奴 担当生徒も変な奴

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共にドアを開き、教室を去っていった。その後ろ姿からは、『やっせん〜! やっせん〜!!』という楽しそうな歌声が聞こえてくる……ホント、世の中には残念な美人ってのがいるんだなぁ……

「お疲れ様でしたカシワギさん」

 川内の賑やかな声が聞こえなくなってすぐ、大淀さんの柔らかな声が俺をねぎらってくれる。耳に心地いい声によって紡ぎだされた『お疲れ様』の言葉は、俺の全身に安堵をもたらした。

「……ハァー……ッ」
「はじめてとは思えない授業でしたね。過去に授業の経験があるんですか?」
「そ、そんなものはないですが……ハッ!? 夜戦ですか!? まさか夜戦の経験がデスカ!?」
「私は夜戦に特にこだわりはないですけど……」
「そ、そうですか……」

 いつの間にか毒されていた己の精神が、大淀さんによって浄化されていく……俺は、いつの間にかあの『夜戦バカ』にメンタルを侵食されていたようだ。パソコン操作を『夜戦』と認識してしまっていた……ッ!!

「つーかそもそも夜戦って何ですか?」
「文字通り夜間の艦隊戦です。私達軽巡洋艦は元々夜戦が得意なんですが、川内さんはそれに輪をかけて夜戦が好きなんですよね。夜戦と聞くと、血沸き肉踊るそうです」
「まさにそんな感じでしたもんね……」
「今でこそだいぶマシになったんですが……従軍時代はそれはもう大変だったんですから」

 あれでだいぶマシになっただと……!? 過去はどれだけ凄惨な夜戦バカだったんだ……!?

「まぁ何はともあれ、今日は何事もなく乗り越えられましたね。仲もよくなったようで何よりです」
「はぁ……つーか、俺が担当で大丈夫なんでしょうか?」
「あなたは不安に感じたかも知れませんが……カシワギさん、途中でうまく川内さんをさばいてましたからね。相性は悪くないと思いますよ?」
「はぁ……」

 本来なら、あんなべっぴんさんの担当になれるって……しかも相性いいって言われるって、すんごいうれしいことなんだろうけどなぁ……全然うれしくないよ……むしろ疲れそう……。

「これが毎晩……ッ!?」
「ですね。お昼すぎからの授業にも入ってもらいたいので、明日も今日ぐらいの時間に出勤して下さい。しばらくの間は私も残りますが、最終的にはカシワギさん一人で夜の教室は対応していただくことになります。人数が増えてきたらまた考えますけど」

 正直な話……大淀さんがいなくなったら、俺は一人であの夜戦バカを相手に出来る気がしない……

「一日も早く慣れていただくためにも、クローズの仕方とか、早速いろいろと教えますから」
「はい……」

 こうして、俺の生まれてはじめてのパソコン先生としての授業は終わった。その後はクローズ業務のレクチャーを大淀さんに教わった後、タイムカードを切って帰宅。帰り
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