プロローグ
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戦争は終わった。
いや、深海棲艦との戦いのことじゃない。確かにそっちの戦争も数カ月前に終戦したらしいが、俺が言いたいのはそっちではない。
俺が言う『終わった戦争』というのは、俺がかつて勤めていた会社との戦争だ。
俺は当時プログラマーとして、web制作の会社に勤めていたのだが……その会社がまぁ〜地獄みたいなところだった。朝は始発で家を出て、夜は終電で家に帰る日々。意味が分からないことに、一年中繁忙期のような忙しさ。休日出勤当たり前。会社に泊まりこみで仕事もザラだったし、ヒドいと一ヶ月家に帰ることが出来ないこともあった。
想像出来るだろうか。3日に一回しか眠ることが出来ない日々を。そして、そんな毎日が三ヶ月以上続いた時、自分が一体どんな状況に陥ってしまうかを。……そんな状況を、俺は手取り14万の安月給で、ずっと耐え忍んできた。
そうして一ヶ月前、ついに俺はキレた。コードを書いてる途中に何もかもがイヤになり、キーボードをひっくり返して椅子から立ち上がって、スーツが汚れるのも構わず、床の上を転げまわりビクンビクンと痙攣しながら、怒りと悲しみと恨みつらみのすべてをぶちまけてやった。
――お前ら! 駅のホームでただひたすらぼーっと3時間立ってたことあるか!?
外に出ただけで、どうしようもない恐怖に震えて立ってられなくなったことあるか!?
目の前のPCが何するための道具なのか、分からなくなったことあるか!?
今の俺がそうなんだよ!! 俺を人間に戻せ!!!
そして俺は自分の机に戻って、その勢いのままに退職届をコピー用紙に書きなぐって、同じ部屋にある社長の机にたたきつけた。今は社長は不在だが、そんなこと俺の知ったこっちゃない。
課長が社長の席まで来て、俺の退職届を手に取った。それを見て顔から血の気がひいたらしい課長は、自分の席に戻ってPCをシャットダウンすべくすべてのウィンドウを閉じている俺に対し、ヒステリックに何かを訴え始めた。
「おいカシワギ! お前に辞められると困る!!」
何を言ってるのかさっぱり分からんし、わかりたくもなかった。あの時の俺を止めるなんて、深海棲艦とかいう化物共でも不可能だ。
「知るか!! 辞められて困るなら、辞めないような高待遇にしろクソヤロウ!!」
口いっぱいに溜まってしまった唾をぺぺぺと撒き散らし、俺は課長に対してそう怒鳴り返した。すべてのウインドウを閉じた後、PCの電源を丁寧に落としてやる。本当なら電源コードを引っこ抜いてやりたいが、そこは一プログラマーとしての最後の情けだ。PCに対してだけは気を使ってやる。
「おい! 仕事どうすんだよ!!」
「有給だ!! 今まで使ってなくて溜めてた分、全部使って辞めてやる!!」
「いろって!
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