運命のエクスシア
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方を見ると、近くのベンチで金髪のシスターが頭を抱えて落ち込んでいた。ふと、私は一瞬だけその姿が彼女と重なり、おずおずと尋ねた。
「まさかと思うけど……マキナ?」
「?」
私の問いに顔を上げたシスターだが、私を見て首を傾げていた。顔立ちはかなりマキナと似ていたけど、どうやら人違いだったらしい。
「すみません、知り合いと勘違いしてしまいました」
「ああ、そうでしたか……。勘違いなんてよくあることですし、気にしないでください」
よかった、この人は普通……というかまともな人そうだ。もしこの人がさっきの人達のようだったら、いくら臆病な私でも本気で聖王教会に怒鳴り込んでたかもしれない。
「えっと……すみませんが、この辺りでまともな服屋ってありますか? その……店員さんの意味で」
「それでしたら、あちらの方に老舗のブティックがありますよ」
「そうでしたか、教えてくれてありがとうございます」
「いえ、お役に立てて何よりです」
親切なシスターにお礼を言った私達は、早速その店に向かうことにした。老舗というから古めかしい雰囲気を想像していたけど、別にそんなことはなく、小ぢんまりしてて隠れ家といった雰囲気で、なんか懐かしい気分にしてくれる店だった。ただ、普段着に使えそうな普通の服が多い店の中で、ひと際異色を放つ衣服が入り口の前に飾られていた。
『ベルリネッタブランド新作! “エクスシア・ドレス”ブラックパール・バージョン 18000GMP』
ゴシック調の漆黒で綺麗な衣装の中心に白い十字、所々に青色の複雑なデザインが縫われていて、着る者に魔女のような妖艶さとお姫様のような可憐さを与えそうな服だった。私もこの服はいいセンスだと思うし、着てみたいと思う気持ちは湧いたけど……
「流石にこれを普段着にするわけにはいかないね。何より高級品だし」
それに生地と道具、製作時間さえあれば、ここまでとは言わないが私でもそれなりのものを作ることはできる。ジャンゴの服も私が作ったものなんだし、最初から普段着として使うつもりなら生地から作るということも考えておいて良いかも―――、
「これください」
「毎度!」
「って、あれ!?」
いつの間にかケイオスが今の服を勝手に購入していた。いきなりの展開に私も唖然とした声をあげるが、紙袋を受け取ったケイオスはこっちに顔を向けて、
「気に入ったんでしょ?」
「それは……まあ……うん……」
「ならいいじゃん」
あっけらかんとその紙袋を私に渡してくれた。そんなアッサリ高級品を渡されると、こっちも戸惑ってしまう。ひょっとしてケイオスは金銭感覚が少し変なのではないか、と思ってしまったけど……でも……、
「……ありがとう。大事に使うよ」
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