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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十七話 敗戦の余波
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新しい宇宙艦隊総司令部はミューゼル少将を中心に編成されると彼は考えた……」
「シュターデン少将はそれが許せなかった、そういう事か……」

クレメンツとリューネブルクの会話が聞こえる。シュターデンは納得がいかなかった。何故ヴァンフリートで失敗した俺が総司令部を仕切るのか……、だからクラーゼンを焚き付け宇宙艦隊司令長官にした……。なるほど確かに今回の人事は俺が引き金になったのは間違いない。

「ヴァレンシュタインが絡んだのもシュターデンを強硬にしたのだと思います」
「どういう事だ、それは」
「シュターデン少将も小官と同時期に士官学校の教官を務めたのですよ」
意外な事実だ、思わずリューネブルクと顔を見合わせた。彼も驚いている。

「しかしヴァレンシュタインの成績やレポートの評価欄にはシュターデンの名前は無かったが……」
リューネブルクが首を傾げながら問いかけた。その通りだ、シュターデンの名前は無かった。有るのはクレメンツがほとんどだ。リューネブルクの問いかけにクレメンツが苦笑交じりに答えた。

「シュターデン少将が彼を嫌ったのですよ。いや、それ以上にヴァレンシュタインがシュターデン少将を嫌ったと言った方が良いでしょうね。おかげで彼に対する評価は小官が行う事になりました」

またしても意外な事実だ、だから評価欄にはクレメンツの名前が多かったのだ。ハウプト中将がクレメンツの名前を挙げたのもその所為だろう。
「……何故そのような事に?」

「……シュターデン少将は戦術にこだわり、戦術シミュレーションでの勝利を重視しました。戦場では戦術能力の優劣が勝敗を決定すると。しかしヴァレンシュタインは戦争の基本は戦略と補給だと考えていたのですよ。戦術シミュレーションでの勝利にこだわる事は無意味であり、有る意味危険だと彼は考えていた」

確かにそうだろう、生き残ることにあれほど執着を見せたヴァレンシュタインだ。戦略的な優位を確立したうえで戦う事を重視しただろうし、それが出来ないなら、勝てないなら退却を選ぶ事を迷わないに違いない。三百敗のシミュレーションがそれを証明している。

「彼の戦術シミュレーションが拙劣なものならば負け犬の遠吠えでした。しかし彼は非常に優秀だったのです。兵站科を専攻した彼が戦略科のエリート達を片端から破った、にも拘らず彼は戦術シミュレーションでの勝利を重視しなかった……。シュターデンは何時しか彼を嫌い疎むようになった」
「……」

部屋に沈黙が降りた。リューネブルクも俺もクレメンツも黙っている。コーヒーを一口飲んだ。冷めかけたぬるいコーヒーだ。苦さだけが口に残った。

「シュターデン少将にとってヴァンフリートの戦いはヴァレンシュタインとミューゼル少将の所為で敗れたようなものでした。そしてイゼルローン要塞攻防戦
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