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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十七話 敗戦の余波
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した。

「そんな事は有りません。あの退屈な辺境警備に比べれば天国と言ってよいでしょう」
「安心してくれ、クレメンツ准将。ミューゼル少将は冗談が下手でな、装甲擲弾兵は貴官を差別するようなことはせんよ」
リューネブルクの言葉にクレメンツは笑みを浮かべている。笑顔は悪くない、変な癖のある人物ではなさそうだ。

「これからはこの元帥府も陸戦だけではなく艦隊戦もこなせるだけの陣容を整えたいと思っている。協力してほしい」
俺の言葉にクレメンツは笑顔を大きくした。
「元帥閣下からもミューゼル少将に協力してほしいと言われております。小官に出来る事で有ればなんなりと……」

クレメンツの答えが嬉しかった。だが同時に少し意外な思いがした。オフレッサーも艦隊戦の陣容を整えようとしている。あるいはいずれ宇宙艦隊司令長官、という事が頭に有るのか……。リューネブルクも何やら考え込んでいる。俺と同じ事かもしれない。

「ミュラー大佐とは会ったかな? 卿の教え子だと聞いたが」
「ええ、会いました。良い軍人になりました。キスリング中佐もです」
「そうか、……実は卿に教えてもらいたい事が有る。……エーリッヒ・ヴァレンシュタインの事だ」

俺の問いかけにクレメンツはそれまで浮かべていた笑みを消した。コーヒーを一口飲む。
「何故でしょう?」
「前回のイゼルローン要塞攻防戦だが、ミサイル艇の件、聞いているかな?」

俺の問いかけにクレメンツは頷いた。
「ええ、聞いています。閣下であれば見破るだろうとヴァレンシュタインが警告したと……」

「元帥閣下にあの男と互角と言われた。だが私はそうは思えない。ヴァレンシュタインは私があの作戦を見破ると考えた。だが私はあの作戦をヴァレンシュタインが考えたのだと思ったのだ。本当に互角ならあの作戦はヴァレンシュタインが考えたものではない、そう考えるはずだ……」
「……」

口の中が苦い。負けるという事、それ以上に及ばぬのではないかという思いが口中を苦くする。コーヒーを一口飲んだ、どちらが苦いだろう? 分からなかった。
「あの男は私の事を良く知っている。あるいは私以上に知っているのではないかと思えるときが有る。だが私は彼の事をほとんど知らない、その事がどうしようもなく恐ろしい……」

クレメンツが俺を見ている。嘘は吐きたくなかった。これからは彼の力を必要とする事が多くなるだろう。正直に話そうと思った。
「だからあの男の事を知ろうとした。そしてあの男の事を知る度に怖いと思う気持ちが強くなるのだ、勝てるのかと不安になる。それでもあの男の事を知らねばならないと思う」
恐怖を感じて蹲るか、それとも戦おうとするか……。俺は戦わなくてはならない……。

「……勝つために、ですか」
「そう、勝つために……。いやそれ
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