暁 〜小説投稿サイト〜
グランドソード〜巨剣使いの青年〜
第4章
3節―刹那の憩い―
競い合うということ
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である。
 常に戦いが終われば誰かの命は失われ、それを糧に自分は生き残ってきた。
 だからこそ戦う中に“楽しい”という感情は浮かんでこない、背負うものが“呪い”であり背負うことが“宿命”なのだから。

 けれど、今は違う。
 刹那気を抜けば、負けてしまう…そんな状況であるというのにソウヤは楽しかった。
 きっとそれはこの戦いが命の奪い合いではなく“勝負”だから、“力の競い合い”だったから。

 ソウヤとナミル、両者が少し頬を緩めて笑った瞬間――

「らぁッ…!」
「はぁッ…!」

 ――剣戟は再開される。

 これは命の奪い合いではなく、ただの遊戯だ。
 これはソウヤとナミルの、真剣な競い合いだ。
 故に両者は笑い、両者は真面目に剣撃を放ちあう。

 三振りするごとにその集中は増す。
 二振りするごとにその速度は増す。
 一振りするごとにその正確は増す。

 それは最早、ただの人外レベルの戦いになっていた。
 誰にも視線を追うことはできない、誰にもこの戦いの詳細を理解できない。

 だがそれでいい。
 この勝負は決して観客の為ではない。
 この戦いは2人の為だけに行われる。

「――――」
「――――」

 集中度が増す。
 速度が上がる。
 極小の穴に糸を通すような、正確な剣捌きが起こる。

 手、腕、脚、足、胴、頭、目、耳…使えるモノは全て使い切り、ただ一撃を相手に入れることに専念。
 その手で攻撃を、その腕で逸らし、その脚で動き、その足で止まり、その胴で向きを変え、その頭で考え、その目で騙し、その耳で把握する。

 一が十に、十が百に、百が千に。
 少しずつ軌跡は増え少しずつ音が遠くなり――

「…俺の、勝ちだ」
「…あぁ、俺の負けだ」

 ――永遠かと思われる戦いはその幕を下ろす。

 手に持つ片手剣をナミルの首筋へ宛がうのはソウヤ。
 手に持っていたはずの大剣を地面に突き刺されたのはナミル。
 勝敗は、ソウヤの勝ちだった。

 静寂が空間を占める。
 見ていた観客は着いていけず、ただ唐突に終わる戦いに呆然とするしかない。

「ん、勝者…ソウ、ヤ」

 ようやく、ルビがそう宣告することで観客たちは状況を把握し始める。
 勝ったのはソウヤで、負けたのはナミルなのだ…と。

「う、うおおおおおおおお!」
「すげええええ!」

 身体能力は並の冒険者。
 けれどその体で起こされた戦いは、あまりにも人外染みて観客は「すごい」としか言う言葉が見つからない。

 それでも勝った者には祝福を、負けた者には応援をするのが礼儀だ。
 観客は、せめてそれだけでも守りたいのかソウヤとナミルを全力の声で歓声を上げて見せる。

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