第4章
3節―刹那の憩い―
天地の光
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光が見える。
「あぁ、すごく綺麗だ」
「…こっちも綺麗なのですが、あっちも綺麗なのですよ」
あっち?とソウヤは思いエミアに視線を向けると、彼女は天高く指を上に差していた。
―上…てことは空?
「…あぁ、確かにすごく綺麗だ」
エミアに釣られ上空を向いたソウヤが見たのは、視界いっぱいに広がる星の海。
大小さまざまな光が、まるで共鳴し合いように瞬きあう…そんな光景だった。
“こっち”が現実的な美しさなら、“あっち”は幻想的な美しさだろう。
現実的な美しさは積み上げてきた重みや温かみを感じられ、幻想的な美しさは一瞬に全てを込めたかのような儚さを感じられる。
どちらも、本当に美しかった。
「初めてだ、こんなにいっぱいの星空を見たのは」
元の世界では都会に住んでいたせいか空気が汚く、星空なんて全く見えなかった。
この世界では毎日が忙しいし、約半分は建造物の中に籠っていたから見なかった。
だから、今初めてわかったのだ――
「この世界は、美しかったんだな」
――護るべき世界が、こんなにも光で満ちているのだと。
「気に入りましたか、ソウヤさん?」
「あぁ…あぁ、すごく」
素晴らしすぎて言葉も出ない。
今だけは本当に自分の低い語彙力が恨めしい…とソウヤは思った。
―こんな感動を、他人に分かってもらえないなんて。
人の温かさと空の儚さ、それは共存出来るのだと知らなかった…それを今、エミアに教えてもらったのである。
「ありがとう、エミア。こんな光景を見せてくれて」
「…はいっ」
あぁ、また惜しいと思ってしまった、“この世界”と別れを告げることを。
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