第4章
3節―刹那の憩い―
見るべき人々
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息を呑む。
そうして初めて、ソウヤは“スラム街”という場所に入ったことがないことを思い至った。
「…ソウヤは初めてか、明るい街の影を見るのは」
「あぁ、きっと俺は“見て見ぬ振り”をしていたんだと…思う」
ちょっと目を凝らせば見えてくる真実。
それに目を背け、表面しか見ようとしなかったのは…誰でもないソウヤだった。
―きっと、思いたくなかったんだ。こんな不幸な人がいるんだって。
自身より不幸な人なんて多くいるのだと…そう思えてしまえる場所を知るのが嫌だった。
自身より不運な人なんて多くいるのだと…そう分かってしまう場所に来るのが嫌だった。
「ありがとう、エレン。…俺の為、なんだろう?」
昔なら、確かにそう思って見るのも…知るのも嫌がって目を背けていただろう。
けれど今は違うのだ。
その事実を受け止めきれなかった心は強く、しっかり見据える度胸が無かった精神は硬くなっている。
きっと今のソウヤなら大丈夫なのだと、そう思ってわざわざ自分の時間を切り崩してここに訪れてくれたエレンの気持ち…それを今、ソウヤは凄まじく尊敬した。
人を気遣い、必要とあれば支え、必要とあれば無視をする。
だからこそ成長出来るのだと思える瞬間があれば、その為に全力を尽くす。
“民の為の騎士”。
それがエレンの、強く誇らしく…なにより気高い魂だった。
「知ってほしかった。この世には辛く苦しい出来事を強制的に合わされたの人がいるのだと」
「あぁ、今…それをエレンに知らされた」
「分かってほしかった。ここにいる人たちの分だけ、私たちが…君が“救った人”なのだと」
「ぁ――」
あぁ、そうだ。
そうなのだ。
確かに彼らの瞳は暗く、生きる術が無い。
けれど、確かに彼らの瞳には“絶望”も無かった。
“そこは魔物、魔族や天使…そんな存在によって家を追われ、家族を亡くし、生きる術を失いかけた人々が集う場所だった”。
その魔物や魔族を追い払ったのは誰?
その襲い来る天使から護ったのは誰?
――誰でもない、自分たちなのだ。
今気付く。
確かに彼らの瞳には“希望”があった。
「諦めて、いないのか」
「あぁ、生きていれば何度でも立ち上がれる。どれだけ切羽詰まっていても、立ち上がれるんだよ」
彼らは決して諦めない。
だって、彼らを脅かす存在は“もういない”と思っているから。
災厄を巻き起こす魔族や天使は、もう姿を現していない。
家を追った魔物はその力を急速に弱め、弱体化している。
彼らの命を脅かす存在はいないのだから、どうやったって立ちなおせるのだ。
摘まれた草木は、もう一度生やせるのだ。
「…そっか。諦
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