第3章
1節―最果ての宮―
92層―後半―
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器というわけでもあの身体ではあり得ないだろうから、あのカブトムシモドキ…もといスライダーに壊されたか失くしたのだろう。
「お前、武器は?」
「えっと……」
男性はピクリと手を震わせるとその右手を頭へ持っていく。
「あ、あはは。失くしてしまったようです」
一瞬、手がおかしくなっていたことにソウヤは気付きながらもあえて指摘することはなかった。
アイテムストレージから薙沙を取り出すと、男性に向けて放り投げる。
「わっ!」
「戦えるのなら手伝え、少しでも戦力が欲しい」
男性はソウヤと薙沙を交互に見つめると、「ありがとうございます!」と言って帯刀した。
「この剣の名前を教えてもらっていいですか…?」
男性が目をキラキラとしてそう聞くので、ソウヤは何も感じること無く名前を教えた。
薙沙を慣れた動作で男性は抜刀すると数回素振りを行う。
ソウヤの目は間違っていなかったようで素振りの1振り1振りがキレがあり、ソウヤと同じくらいはありそうだった。
―スライダーを余裕と言っていたのは伊達じゃない、か…。
「そういえば、皆さんの名前を聞いていたなかったですね。教えてもらっていいですか?」
薙沙を帯刀した男性が、唐突にそんなことを聞く。
ソウヤとルビはそれぞれに自分の名前を言った。
「ルビさんとソウヤさんですねっ。僕は――」
男性は礼儀正しく一礼すると、優しげに笑みを浮かべる。
「――エルトです」
その時、何かが起こる予感をソウヤは心のなかで抱いた。
「結局、95層にあるお前の家まで送っていけばいいんだな」
「すみません…」
「いや、良い。俺もこの先の層に行きたかったんだ。行き方を知れるのなら別に大したことはない」
エルトの道案内により、結局分からないままだった次層への道のりをソウヤ達は歩いている。
この一件貧弱そうに見える青年を助けることが、次層へと行く鍵だったのだろう…とソウヤはゲーマー脳で仮定した。
事実、エルトが示した道のりは獣道一本も通っていない森のなかを突っ切ることだったのだ。
色々とソウヤが思案していると、不意に背筋が凍るような感覚に襲われる。
危険察知能力の危険信号だ。
「待て」
ソウヤは前にいるエルトと横に居るルビにそう短く言うと、腰から雪無を抜き放ち周りに注意を撒く。
そこで敵が居ることに気付いた2人はそれぞれの得物を取り出す。
周りの風景は今までと全く変わらない。
小鳥が冴えずき、穏やかな風が吹くこの空間は一見何の問題のないようにみえる。
しかし、それは相手が殺気を野生の動物の警戒心さえも誤魔化すことが出来るほど隠しているからだ。
まるで細い糸を小
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